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宇宙をかける少女_ss『幸せな夢はバスタブの底に沈む』 / テレビアニメ

    


 またもアメブロの方でアップ済の『そらかけ』ssです。
 三女四女の対になっているお話の今回ナミ視点の方・・・なのですが。
 思いついたときから時間が経つにつれ、書きにくくなっていったという経緯があったり。
 仲良くさせることが妙に難しい姉妹です。
 でも、いつかどこかで彼女達が和解できるよう祈りをこめてお送りします。

 で、いつもの注意書き。
 本編との矛盾を見つけてもスルーでお願いします。
 では、続きから。


幸せな夢はバスタブの底に沈む



「大きくなったら、何になりたい?」
 手をつないでいた人から、不意にそんなことを聞かれた。
 それはつまり・・・
「えっと、何屋さんになる?・・・のおはなし?」
「うん、そうだね。オトナになったら、どんなおしごとがしたい?ってことね」
 難しいことはわからない自分の疑問に、いつものように笑顔で答えてくれる。
 でも。
「むー・・・」
 リビングの見慣れた天井を眺めて考えるも、聞かれたことの答えはなかなか見つからなかった。
 そんなことは、考えたこともない。
 ただ漠然とあったのは、たった一つの思い。
 いつも手を握ってくれるこの人と、ずっと一緒にいたいということだけだった。
 ダイスキなこの人といっしょなら、おしごとなんて何だっていい。
「ねえ、おねえちゃんは何屋さんになるの?」
 だから、こう聞いてみた。
 同じ仕事をすれば、一緒にいられるはずだ。
「アタシ? うーん、そうね。なんだろう・・・かわいいお洋服がまいにち着られるおしごとだとうれしいな・・・」
「うん」
 それはステキだ。とってもいい。
「それだと、制服がある方がいいのかな・・・」
「せーふく? かざねおねーちゃんとか、たかねおねーちゃんが着てるみたいな?」
「あー、それは学校の制服ね。そうじゃなくて・・・おまわりさんとか、おしごとで服が決まってるのもあるじゃない?」
「うん」
「でも、ずっとおんなじ服だと飽きちゃうかも・・・。かわいい服がいろいろ着られるといいけど、そんなおしごとあるかな・・・?」
 そういって、おねえちゃんは考え込んだ。
 自分は、その答えをわくわくと待つ。
 しばらくして、おねえちゃんは顔をあげて言った。
「あ、そうだ・・・モデルさん・・・とか?」
「もでるさん?」
 なんだろう。しらないコトバだ。
「うーんとね、新しい服を着て、みんなに見せてくれるおしごとだよ」
「わあ!」
 ぴったりだ。
 そんなことをおねえちゃんとできたら、どんなにいいだろう。
「ナミもそれやる! オトナになったら、おねえちゃんといっしょにモデルさんになる!」
「またアタシといっしょ? ナミはマネっこさんだね」
「だってナミ、あきはおねえちゃんダイスキだもん!」
「あはは、ありがとう。おねえちゃんもね、ナミが・・・」
「うえええぇぇぇん!!」
 突然、泣き声があがった。
 生まれたばかりの末妹、桜が大きな声で泣いている。
 家のメイドたちの姿は傍にはない。他の用事で離れているようだ。
「秋葉ー、みんな手が離せないの。桜をお願い!」
「はーい、風音おねえちゃん」
 一番上の姉の声に秋葉は素直に返事をして、ナミの手を離す。
 ナミの頬がぷうっと膨れた。
「ごめんねー、ナミ。アタシ、ちょっと桜を見てこなくっちゃ。・・・そうだ、さきにおフロに入っててくれる?」
 本当は、そんなのイヤだった。
 でも、おねえちゃんを困らせるのはいけないことだ。
 だから、ナミはしぶしぶ頷く。
「さすがおねえちゃんだ。ナミはえらいね」
 そう言って頭を撫でてもらって、ナミの機嫌は一気に直った。
 そうだ。ジブンは、モデルさんになるんだ。そして、おねえちゃんとずっといっしょなんだ。
 これくらい、ガマンできるのだ。
「おフロ、いってきまーす!」
 そう言って、ナミは元気に駆け出した。



「――ぅわっぷ!」
 
生温い湯が口に入り、ナミは思わず声を上げた。
 浴槽に浸かったまま、いつの間にかうとうとしていたようである。
 何だか夢を見ていたような気がするが、よく思い出せない。
 まあ、どうでもいいことだ。
 そんなことより問題なのは。
「なんなのよ、もう・・・。何でみんな、バカ秋葉のことばっかり・・・!」
 家を襲撃されたというのに、どうして自分には何も知らされないのか。
 何故、みんな秋葉のことばかり気にかけるのか。
 他の姉妹達のように秀でた能力も持たず、自分のモデルのような実績もない、あんなダメな姉のことを。
 納得できない。できるはず、ないではないか。
 関係のないこっちにまで、迷惑をかけて。
 何だって、アタシが苦労させられねばならないのだ。
 しかも、そんなアタシのことを、誰一人・・・
『ナミはえらいね』
「・・・え?」
 なんだろう、今一瞬、何か思い出しかけた。
 これはそう、昔、自分を認めてくれた誰かの声だ。
 誰なのかはわからない。
 いや、誰でもいい。
 自分を認めてくれるのなら、誰であろうと構わない。
 アタシには、この声がある。それが何より重要なのだ。


――どうよ、秋葉。見なさいよ!


 様々な理屈をぶち抜いて、ナミは勝ち誇る。
 この声には、彼女をそこまで奮い立たせるだけの力があった。
 その勢いのまま浴槽から出て、風呂の栓を引っこ抜く。
 中の湯がどんどん抜けていくが、そんなものに興味はない。ナミはさっさと背を向けて、浴室の外へと出て行った。


 それは、彼女が家を出る、ほんの僅かに前の出来事。



終わり



 後書き、というか言い訳。
 えーと、ナミ視点の妄想もいいところな恥ずかしいお話でした。
 もちろん、ナミがモデルになったのは秋葉が所以などという事実は一切ございません。ご了承くださいませ。

 終わりがお風呂場なのは、ナミはお風呂との接点が結構あるっぽいからです。
 最終話で入ってたバスタブだけでなく、10話でもふてくされて湯船に浮かんでいたらしいですし・・・よく覚えてませんが(公式ブログを参照・・・ってちゃんと確認しろという話)。
 つつじの持ち物には獅子堂家からむしり取った(風音さん談)ものが多いことを考えると、あのバスタブも元は獅子堂家のものだったりするんですかね・・・やっぱり確認できないのですが。

 それはともかくナミはドラマCDでも桜とお風呂に入ってますし、やっぱり何か繋がりがあるみたいです。
 そのドラマCD(一枚目)によると桜の面倒はナミがよく見ていたようですが、これはそれより前のお話ということで。

 秋葉5歳、ナミ2歳くらいのつもりで書きました。流石に2歳児に赤ん坊の世話は無理だろ、ってことでお願いします。
 秋葉がイモちゃんと遊びまわるようになるのも、もう少し先かなーと。
 それにしても、なんでワタシの話にはイモちゃんの出番がないんだろうなー?
 まあ、口調とかいろいろ書きにくいとは思っているんですけど。出すとして、何をさせたらいいかよくわからないんですよねー。
 あ、単に秋葉の出番が少ないからかもしれないのか。あの子、基本秋葉と一緒だから。

 ともかく、CDでもOVAでも第二期でもいいですから、この姉妹・・・を含む五姉妹全員が仲良くできればいいなーと願っております。
 そんな感じのお話でした。



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