スパイダーライダーズ_SS『キミの瞳はソラの色』5 / テレビアニメ


スパイダーライダーズ話、第5回。
『宙のまにまに』感想は、明日以後で。
アメブロの更新が結構きつかったりします。
ss毎日書いてるからな・・・ネタ切れにはまだなってませんが、時間と疲労がめいっぱいきてる感じです。
そんな感じで、以下は続きより。
改めて見れば、目の前の青年とコロナの記憶の中のハンターはあまりに違っていた。
ツンと立った硬い髪はそのままだったが、後ろは短く刈られており、結ぶ必要がなくなっている。口元の襟でくぐもっているけれど、声が確実に低くなっているのもわかった。
そして、最も変わっていたのがその体つきだ。
イグナスほど長身というわけではないしマグマのように筋肉質でもなかったが、少年の頃とは身に纏う雰囲気が違うのだ。
かつてのハンターは、よく弾む鞠を思わせる男の子だった。すばしっこくしなやかな性情は、外見からもそれとなく伺えた。
しかし今コロナの前にいる青年は、若木のようにまっすぐでしっかりと芯が通っているように見える。何となく、落ち着いた印象を受ける。
一目見ただけではわからなくても当然だ。
そこにいたのはかつてのやんちゃな少年ではなく、精悍な若者だった。
コロナは、足元が揺さぶられているかのような感覚に陥った。
自分を支えていた何かが不意に消えてなくなってしまった、そんな思いにかられる。
この人は、ハンターだ。わたしのよく知っている、ハンターだ。
でも、この男の人をわたしは知らない。知らない、人だ。
この矛盾は何なのだろう。
「コロナ?」
この場所は、二本の道がぶつかっているだけのごくわずかな広さしかない。道の片側はすぐ森、もう一方はすぐ崖という狭いスペースに二人は立っている。
動揺して、それを隠せるだけの広さはない。
当然気付いたハンターも、怪訝そうにコロナを見やる。
「具合でも悪いのか? 顔色、良くないぞ」
見下ろしてくるハンター。
コロナには、それは想定外の出来事だった。
だって、ハンターは小さくて。見下ろしていたのは、いつもわたしで。
だからこんなのは、おかしいんだ。
「な、なんでもないわよ・・・」
自分の中に残った冷静さを総動員して、無理やりに笑顔を浮かべる。
取り乱すわけにはいかない。そんなことをしては、認めることになる。
――認める? 何を?
自分の知っているハンターは、もういないということを。
しかし己のことで手一杯なコロナの気も知らず、青年は食い下がった。
「いや、でも調子悪そうじゃないか。少し日陰で休むとかさ・・・」
もういない?
そうだ、この青年があの少年の今の姿だというのなら、もうあのハンターはいないということではないか。
帰ってくるのを待っていたのに、三年間も待っていたのに、帰ってきた時には変わってしまっているなんて。
そんなの、あんまりだ。
「なあ、コロナ・・・?」
ふざけるのも大概にしてほしい。
「ちょっと黙っててよ!!」
「うえっ!?」
思わず声を荒げたコロナに、完全に意表をつかれた青年は踏み出しかけた足をもつれさせバランスを崩す。
そして悪いことに、彼が倒れこもうとしていた場所に有ったのは、優に90度はある急な下り斜面――一般的には『崖』と呼ばれるたぐいの――だった。
「危ない!」
危機的状況に、コロナは余計な考えは捨て去って反射的に青年に手を伸ばして――
腕を掴んだ瞬間、奇妙な安堵を覚えた。
なんだ、ハンターじゃない。
頼もしいけど頼りない、あのハンターだ。
予期せぬ状況におたつく青年は、あの少年とそっくり同じ顔になっている。
ああ、この人はやっぱり・・・・
――と、安心するのはまだ早かった。
思わず緊張が抜けた一瞬、コロナは予想外に強く引っ張られ・・・
「え?」
ハンターの重さに彼女の身体は傾いていき、彼の腕を掴んだままコロナは崖へと倒れこんでいく。
「ビーナス! 糸を・・・」
いつものようにパートナーに助けてもらおうと手を伸ばしたが、現在彼女は・・・
「うちに置いて来たんだったあああぁぁぁ・・・・」
そういうわけで、助けは来ず。
二人は揃って崖を落っこちていった。
続く
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