スパイダーライダーズ_SS『キミの瞳はソラの色』3 / テレビアニメ


昨日の続き、3話目です。
ネタバレあるので以下は続きから。
いつもの(すごく簡単な)前書きっぽいのは、内容にも関係するので本文後につけます。
ビーナスの怒声にシャドウがしどろもどろ抗弁しているのが聞こえたが、コロナは足を止めなかった。
別に怒っていたわけではない。
ビーナスはそんなに気にすることないのに、とさえ思う。
シャドウに悪気は全くないのだ。そういうところはハンターとよく似ている。
だが、彼らのやりとりを止めようとは思わなかった。
――ケンカできるだけでも、いいじゃない。
そう思えてならなかったから。
どちらもはそのことに気付いていないだろうし、きっと教えたところで本当には伝わらないのだろう。かつての自分がそうであったように。
以前の己とハンターを思い出す、シャドウとビーナスの姿。
微笑ましいはずなのに、どうしてだか気が滅入って仕方ない。
そんな自身がなんだか後ろめたくて、コロナは家を出てきてしまった。
――本当に今日の自分は変だ。
素直に認める。確かにハンターがいないのは寂しい。
でも今になって、何故こうも心が揺れるのか。
折りにふれハンターのことを思い出していたのは事実ではあるけれど。
ざわざわとした村の喧騒。
アラージャ村が小さな村とはいえ、人々の話し声や川の流れる音などは耳に届いてくる。
でも、四六時中それで沈み込んでいたわけではないのだ。
それではこの3年、とてもじゃないけれど仕事にならない。
ざわざわ。ざわざわ。
そう、3年。彼がいなくなったのは、そんなにも昔。
ざわざわざわ
そのざわめきとは別のどこかから聞こえてくる声。
『ねえ』
マナクル内のスパイダー達で、姿無き相手との会話には慣れてしまっているコロナ。
しかもその声は不思議と親近感を抱かせる。
考え事に気をとられていたこともあって、コロナは「何?」と驚くこともなく返事をした。
声の側も当然のように続ける。
『まだ待つの?』
――だって…
『うん、約束したわね。また会おうって』
――ハンターは自分の都合で約束を無かったことにするひとじゃないもの。
『それは否定しないわ』
――きっともうすぐ…
『それは、本心?』
――え?
ざわざわざわざわ
『その約束を、彼はもう覚えていない。その可能性を考えたことがあるでしょう?』
シン、とその瞬間あたりが静まり返る。
笑う子ども達。風に揺れる木立の枝葉。流れる川。
どれも変わらずそこに在るのに、音だけがさっと途絶えた。
なのに、聞きたくないその声だけが聞こえてくる。
『疑うのも無理もないわ。もう3年も前よ。彼が忘れてしまったとしても、不思議ではないもの』
コロナは反論しようとと口を開くも、その唇を小刻みに震わせることしかできなかった。
言い返さなきゃと急かす心とは裏腹に、言うべき言葉が見つからない。
他の音はいまだ途切れたまま。あたりは沈黙に支配される。
――ああ、そうか。
コロナは唐突に理解した。
耳から入る全てを追い出したところで、この声から逃げられはしないのも当然だった。
――この声は、わたしの中から聞こえてきているんだ。
『そう。やっと気付いてくれた』
呟きには喜びがこもっている。その理由が、ようやく自分を認めてくれた、という思いにあるのだとコロナには何となくわかってしまう。
後に続いた一言には、その喜びが生んだ余裕がにじみ出ていた。
『それじゃあ改めて聞くね』
この先を聞いてはダメだ、という思いが瞬時に浮かぶが、コロナにはどうすることもできない。
コロナ自身――いや彼女の一部というべきか――である声は、その気持ちをわかっているのだろう、浮かれた調子はきっぱりと断って。あくまでも真剣に問い掛ける。
『まだ待つの? もうハンターは 帰ってこないかもしれないのに?』
それは、コロナが考えないようにしていたこと。
つまりは、考えたことがあるのだ。
思いもしなかった、全くの想像外だ、そう言ったとしたら、それは偽り。
自身の心の声が口にしていることからも、明らかだ。
――アタシは、ハンターを疑ってるんだ。
コロナはそのことを、もう認めざるをえなかった。
続く
ちょっと二重人格っぽいコロナさん。
彼女、自分の意思でなく巫女の力を使ってたり、天使と悪魔を出したりと、その資質は有る気がします。
これを書いてて思いましたが、天使と悪魔みたいな相反する自分の二つの気持ちって、表現が難しいですねー。
映像だと、比較的わかりやすいのですが。
そんな感じで、更に続きます。
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