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宇宙をかける少女_第23話『秘剣、輝く』感想 / テレビアニメ

     


一言結論:大切な人の願いに、圧し掛かる責任。それらを背負った上で君は何を願う?

 ネタバレありなので、以下は続きから。

 



 結局感想がギリギリなってしまいました。
 あ、まとめ感想2の方は読んでなくても以下の文章だけで意味は通じるはずです。
 あの長いやつは、

「風音さんと高嶺さんの最優先は、妹ではなく家の使命」
「秋葉は、肩書きでも力でもなく自分自身を見てほしかった」

 という二つの仮説についてです。今週を見て思いついたこれらの検証になります。
 以後は通常の感想と言うことで先読みがあってもちょっとした予想くらいでいこうかなーと。でも長いですが(笑)
 話題は以下の4つ。


1)補欠がいなけりゃ休めない
2)「誰のために」が「どうすればいいか」を導く
3)それゆけ人外!
4)直接戦闘のすゝめ


1)補欠がいなけりゃ休めない

 まとめ感想2に書いたように、秋葉への感情移入が倍増した今回のお話。
 ただ彼女が問題児という認識にはあまり変化はないんです。
 ここで今まで書いてきた感想でも、わりあい秋葉には厳しめだったと思います。
 彼女が決して嫌いではないんですけど、無条件には肯定できなくて。根はいい子なんだけど、ちょっと・・・って感じでした。
 「箱から出たのも結局周りのおかげっぽいし、なかなか成長してくれない子だなー」と思っていたんですね。
 でも、今回で秋葉は大きく前進したと思います。
 
 実は今週、今まで一番秋葉に同情したんです。
 箱の中でイモちゃんが特攻を知ることができなかった先々週、彼女の死を知らされた先週よりも。
 高嶺さんの言葉に衝撃を受け、逃げるように走り去る秋葉が不憫に思えてならなかったですよ。
 今までのお気楽な彼女、確かに責任感の不足は否めません。ですが。
 そんな状態の子に初めて突きつけられた『責任』。それが「親友が死んだのは自分のせいだ」っていくらなんでも重過ぎる・・・
 しかも「あの子が、私達の最後の希望なんだから!」という更なる重圧が実の姉によって上乗せです。

 洗脳されていた高嶺さんが責任を感じていたのは、風音さんとのシーンでしっかり描かれていたのでわかるんですが・・・
 でも、妹護るのに理由なんか必要ないじゃないですかー。風音さんも仕事優先でほったらかしだし・・・
 獅子堂の姉達は、妹のことを気にかけていないわけじゃない。それはわかるんですが、どうにも心のケアが足りてないっぽいような。
 スール家の方も、再会した末弟から目を離してまたピンチになってるしさ・・・「苦情!?」とか言ってる場合じゃないよ・・・

 秋葉に話を戻しますね。
 自分にしかできない「何か」を探し求めていた(公式サイトより)彼女。当然ですが、秋葉は自分にしかできない「何か」は持っていないわけです。
 だから、それの良い面に無邪気に憧れるばかりで「いいことばかりではない」なんて思いもしない。
 それのせいで辛い目に遭うこともありえるんだ、と今回で彼女は思い知らされたんですね。
 自分にしかできない「何か」があるために、それをしろと強いられる。代役がいない以上「そんなことしたくない。他の人を当たってよ」と逃げることは叶わない。
 『宇宙をかける少女』である彼女は親友の死に悲しみに暮れることすら許されず、孤独な戦いを強制される。

 元来無責任気味な秋葉を襲うのは、常人でも立ち向かうのが容易ではない重圧。
 高嶺さんの元を去った彼女に迫ったのが箱人間の群れ。ここで彼女は、あの箱なら嫌なこと――イモちゃんの死も『宇宙をかける少女』の使命も――は全部忘れられる、と現実逃避。
 正直、これは無理も無いと思います。というか、秋葉ならそうするだろうなーと思いました。

 ってところで、一区切り。
 孤独な戦いの前に屈しそうになった彼女がどのように立ち上がったのか、それは次の項で。

 
2)「誰のために」が「どうすればいいか」を導く

 敵との因縁期間が最短ながらヒロインズを支える彼女が、今回も大活躍。箱を求める秋葉を留めたのは、いつきでした。
 『宇宙をかける少女』とか『最後の希望』とか、そういうこととは別の方向から秋葉を止めてくれます。
 衝撃の「好きなんです」は置いておくとして(その辺についてはまとめ感想2で語りましたし)、「イモちゃんのことを忘れるなんて、ひどい」「彼女のためにもしっかりして」と説得。
 秋葉はこれをきっかけに、今までの彼女に不足していた『責任』そして、自分の為だけでなく『誰かのために』行動することを身につけていきます。

 『責任』っていうのは社会のルールの一つ。
 それはシステムの構築というより、社会が円滑に運ぶためにこそ必要とされる。人間同士がより良い関係を築き、維持するために大切な要素。
 つまり『責任』とは、人間関係を健全あるいは良好にするためにあると思うのです。
 その目的のために何がもっとも大事かと言えば、他者への思いやり。
 それ無くして『責任』――己の役目を、感情を抑えてでも、誰かのため・皆のために全うする――を果たせる人間はいないでしょう。

 秋葉にいきなり「皆のためにがんばれ」っていうのは、大きすぎる。だから、まずはイモちゃん――身近な大切な人なんですね。
 いつきが秋葉に伝えたのは「悲しみから自分を守るために、イモちゃんのことを忘れるの? それはひどいことだよ、イモちゃんが悲しむよ」ということ。
 秋葉もこれで自分が間違っていたことに気付いてくれた。
 ただ、それだけではきっと立ち直れなかったと思います。悲しみが消えるわけではないし、重い責任が圧し掛かっていることにも代わりが無いです。

 では何故彼女は立ち上がれたのか。それは、迫る困難に変化は無くとも、受け止める側を強くしたからだと思います。
 悲しくて悲しくてどうにもならなくて。でも、その気持ちを分かち合ってくれる友人がいた。
 誰にも代わってもらえない、孤独な戦いを強いられた。でも、一緒にがんばってくれる友達がいた。
 だから秋葉は黄金銃を手に取り、レオパルドの元へ行けたんですね。
 確かに酷いことを言われたけれど、自分しかできないことをする――己の『責任』を果たすと決意した秋葉は、それでこそ主人公!

 この秋葉復活のきっかけを作ったのはいつきですが、それをサポートしたのがほのか。そして、意外なことにブーミンです。
 イモちゃんのためにも秋葉を護ろうとしたほのかに加えて、「ここは任せて!」と敵の足止めをしてくれたブーゲンビリアとミンタオ。
 『誰かのために』の手本を秋葉に見せてくれたのだと思います。
 無論、ほのかのこともろくに知らなかったブーミンは秋葉のことも眼中に無かったのでしょうけど(笑)
 ともかく、理屈だけでは動かない子どもが周りの人と触れ合うことで成長する。その道順を丁寧に描きたかったのではないかと思います。

 クサンチッペを撃とうとするいつきを止めた秋葉の姿は、まさに成長の証。
 イモちゃんの死の原因となった(何やら思い込みっぽかったですが)クサンチッペに怒りを感じていたのに。
 それでも、自分のやるせない気持ちをぶつけることはしなかった。「そんなことしたってイモちゃんは喜ばない」と『誰かのために』踏みとどまった。
 彼女、ずいぶん変わったと思います。公式教えたら、応用問題まで一気にできるようになった的な感じです。これが主人公補正?(笑)

 それにしても「まずはネルヴァルを倒しましょう」の言葉でほのかの希望を繋いだいつきが、今度は秋葉に大きく影響を与えましたね。
 ちょっとやそっとで返せない大恩ですよ、どっちも。秋葉とほのかは、もう死ぬ気でいつきの両親を探してください。
 そういえば、いつきの秋葉の呼び方が「獅子堂さん」から「秋葉さん」になったようですね。
 「好き」とまで言った以上、今までと同じ関係ではいられない? 先週の生徒会長とのフラグっぽいのはフェイントだったのか・・・
 そういえば会長は、カークウッドへの潜入以外は何一つ思い通りに行きませんね。意外と報われない人だ(余談)。
 で、いつきのこの告白(?)も呼び方も秋葉は一言も触れない(笑)・・・って、いつも通りか。
 本気で余談ですが「あきはさん」と打った時の一発変換は「秋破産」で、何故か一瞬納得しかけました(笑)。

 さて、まとめに行きます。
 今回のエピソードで、無目的かつ無責任な主人公は大きく成長を果たしました。めでたしめでたし、と思いきや予想外の展開。
 なんと、彼女の引き金であったイモちゃんの死が覆された!
 この辺の驚きは後に書くとして、この展開が示すのは何か考えてみます。

 おそらく秋葉はクライマックスに臨むに当たって、改めて自分の戦う理由を見つけることが必要になってくるのでは。
 推測ですが、彼女は『自分の願い』のために戦うのではないかと思います。
 やっと身につけた『責任』とか『誰かのために』はどこいったよ、矛盾してるじゃないか、って感じですが。
 この二つを持っていること重要だと思うんです。
 「どうしても、これをやりたいんだ」って言ったとして「セキニン? 何それ?」みたいな人間では重みが無いです。
 それより「すべきことはわかってる。もしかしたら皆を傷つける結果になるかもしれない。・・・でも、これだけは譲れない!」って方が断然かっこいいです。そういうのが見たい。
 ソレお前の願望じゃねーか、って感じですが今週気になる点もあったので。

 秋葉が神楽から受け継いだのは『願い』らしいです。
 他の姉妹たちが継承したものが能力的なものなのに、ずいぶん雰囲気が違います。
 『願い』っていうのは、人間性の源泉の一つ。過去によって生じ、現在の行動の根本に位置し、それによって未来が左右される。
 学校で習いましたもん。キャラクターを描くには『願い』を持たせろって(マンガの専門学校なのでそういう授業があるんです)。
 その人物にとってあまりに大きな要素であるこれが、二人の人間で全く同じなんてことがあるのかというのは疑問です。

 秋葉が神楽の願いを知って、彼女の後継者としてそれを成就する、というラストも充分ありえるのですがもう一つ。
 二人の願いが食い違う可能性もありうると思うんですよね。
 で、そうなった時、すごい盛り上がるんじゃないかと。第1話では何の目的も無かった秋葉が最後に辿りつくのが、他の誰でのものでもない自分の意志を貫くこと、っていうのはきれいにまとまりますし。
 使命絶対の獅子堂家、自分に願いを託した神楽の気持ち、それらを振り切ってでも己の道を行く!って展開だったらもうしびれます。「この子また我侭言って!」とか言いません(笑)

 ですが、この案には致命的な問題があったりします。
 なんと言っても、残り話数が足りなすぎる!
 もう23話なのに、やるべきことがまだまだ山積み。ナミとの和解、アレイダ含む明かされていない謎の解説、クライマックスバトルも。
 そんな中で、もう秋葉にごちゃごちゃ考えている時間は無さそうです。
 『願い』が神楽と一致するとしても、戦う理由は必要ですし。すっきり終われるのかコレ・・・

 というところで、この項目も終わりです。まずここがすっきり終われなかった!(何そのオチ)


3)それゆけ人外!

 今回のメインは明らかに秋葉でしたが、彼女の見せ場を支えてくれた人外キャラにもスポットを。

 秋葉奪還チームをレオパルドコロニーへ送ってくれたベンケイとつつじ。
 久々の再会の人たちもいますが、ここまであったことを思うと単純には喜べず。
 ベンケイコンビは依頼をこなした報酬をもらって対ネルヴァル陣営から早々と離脱です。
 ネルヴァルにも目をつけられたようだし、いずれは共闘してくれるんだと信じてもよさそうです。ハイパージャンプがあれば、自分探しの旅からも即時帰還できますし。
 何でもお見通しの風音さんは、彼らを戦闘から遠ざけておきたいような素振り。
 これは、ラストバトルで主人公のピンチに助太刀してくれるためのフラグなのか? っていうかそうだといいな。
 つつじに渡した獅子堂の財産を無傷にしておきたいから、っていうのもありそうですけれど(笑)。むしりとり返すの前提で報酬を多めにあげたとか、風音さんならやりそうだ・・・

 ドS全開のクサンチッペ。
 まさに『悪の女幹部』みたいな人なのに、どうしてこんなに憎めないんだろう。レオパルドのほうがウザキャラだからかなー?
 彼女の「痛ーい!!」の顔が面白くて大好きだったりします。リアクション要因として欲しい。新兵器に対して「何? どこから攻撃してきてるのキャアアアアア!!」とか言う展開を希望していたり。
 死んでなくて本当良かった・・・・って、ナミのパートナーなんですよね? 寝てるうちに捕まっちゃちゃって・・・。イグジステンズも大打撃だし。
 目覚めると、彼女の味方はまた減っているということか。獅子堂の不憫な娘がここにも・・・・

 レオパルド・・・・
 イモちゃんだけでなく、悲しんでいる秋葉に対してもあれは酷い。あまりの言い草に秋葉と一緒に愕然として、彼女が怒り出してもこっちはまだ固まってました。
 ・・・なんて言うか、秋葉へのあの発言は擁護できないしする気も無いですが解説を試みてみますと。
 あの言葉は、ブレインコロニーと人間との相容れなさを表したものではないと思うのですよね。
 イモちゃんの特攻に思うところがあったネルヴァルやクサンチッペ。音信が途絶えたつつじを心配するベンケイと一緒にするのは失礼な話で。
 むしろ、嫌な意味での『人間らしさ』というか。嫌いな相手の不幸を喜ぶ人間の姿に近いというか・・・・
 いくらイモちゃんが生きてたとはいえ、あれを許せるとなったら秋葉は本気で心が広いと思います。でもクサンチッペを許せるならこっちも許さないと変か・・・
 嫌いになったとかではないですが・・・一発殴られたらいいんじゃないかなーレオパルドは。イモちゃんの死に悲しんだ二次元と三次元の人みんなに一発ずつ。通算何発になるかわかりませんが(笑)

 最後に、生還おめでとう! イモちゃん!
 生存の希望は捨ててませんでしたが、帰ってくるのは最終回とかラストバトルの秋葉のピンチだと思ってました。予想以上にお早いお帰りですね!
 先々週のラストで特攻だったから、死亡期間は丸二話にも満たないんですね。それだと、あの演出にも納得です。
 何て言うかあのミサイルに突っ込む場面、製作側がどうにも力を抑えていたような印象を受けたのです。
 もちろん死亡パターンの基本はきっちり抑えていました。でも、この作り手ならプラスアルファの余力があるのではないかと。
 あの人たちが本気を出せば、もっと見る者の胸を抉ってくるはずだ、みたいな(誉め言葉です)。
 でも、あえてそれはしなかったということでしょうか。それやって視聴者を号泣させていたら、この復活に苦情来ますよねきっと、うん。
 関係ないのですが、ミス・アレイダは寝かせる場所もう少し考えた方が良いのでは。ナミが先に起きたらややこしいことになりますよー。
 それから、寝かされていたベッドが秋葉との初対面時に眠っていたものと同じに見えるのですが(公式サイトで確認できます)、その時のものなんですかね?


4)直接戦闘のすゝめ

 レオパルドが秘密兵器を獲得! その『剣』とは、その名の示す通り刀剣的な武器でした。
(そういえば、全部のパーツが揃ったとのことですが『華』っていうのはまだ見つけていないのでは?『剣』と『冠』は手に入れましたけど・・・あれ?)
 それを見て、この作品の戦闘シーンのある特徴に気付いたのでそのことについて。

 概ね、宇宙を舞台にするSF作品のメインウエポンって銃系だと思うんです。それが未来っぽくレーザーとかビームになってたり。
 ようするに射撃武器なのが普通です。宇宙船同士の戦いだったら、ほとんどがそうだと思います。
 ですがこの作品、宇宙船どころかコロニー同士が格闘戦を繰り広げる世界です。
 ブーミンの機体、分離状態ではパンチとキックが主な武器だったんですねー。ミンちゃんの掛け声が面白い(笑)

 引きこもらず人と直にコミュニケーションをとることを推奨しているだけに、戦闘でも飛び道具は使用を控えているんでしょうか。
 秋葉の黄金銃も相手を撃つためのものでなく、レオパルドのソウルシャウツのロック解除っぽい感じだし。まあ、そのソウルシャウツは明らかにレーザー的な武器ですけど・・・
 でもそれ以外で銃器を扱うのはウルくらいでしょうか。今週、いつき・風音さん・ニーナ課長と銃を構えてはいましたが、発砲はしなかったですし。
 常識的に考えれば、精密機械に衝撃を与えに行くなんて無いでしょうし。そういう意図があるんじゃないかなーと思いました。


 あー本気で長かった。
 読んでくれた方、本当にありがとうございました。次の感想は早く書けると思います。
 それではー。


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