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鉄腕バーディー DECODE:02_第12話(最終回)『Before Long』感想 / テレビアニメ

  ネタバレありです。


一言結論:自分にしかできないこと。生きていれば、それはちゃんとあるんです。

 最終回ってことで、以下は続きから。




 今回は早々にバトル開始!
 ナタル vs モス、そしてナタル vs バーディーへ。
 特に後者は、高速戦闘の迫力が満載。
 バトルシーンだけでも見ごたえ充分です。

 前作ラスボスのリュンカ。あちらは街を壊滅させ自身も巨大で、怪獣と戦っているようなスケール感。
 今回は体格のさほど変わらない等身大の相手に、スピード感あふれるバトルが展開されました。
 ストーリーだけでなくバトル面の毛色まで変えてくるとは、感服です。
 巨大な敵リュンカ vs つとむ君、等身大の敵ナタル vs バーディー。
 このように対峙した主人公側も含めると、それぞれの状況を象徴した構図ですよね。お見事。

 バトル以外の点について。
 この最終回を見て浮かんだ言葉は、ああ『大人の話』だなぁ、でした。
 少年の成長をストレートに描いた前作とは対照的です。

 ラストの余韻に、それを一番はっきりと感じました。
 前作では、中杉さんの記憶喪失はあっても、明るい感じでの終わりでした。
 軽やかに跳躍するバーディー、そして彼女の中にはつとむ君。
 一つの出来事を乗り越え、変わらず続く二人の関係。それが見て取れました。
 でも今回は、切なさを感じさせる終わり。
 バーディーは、ナタルの思い出と言葉を胸に静かにたたずむ。
 まるで「オレ達の冒険はまだまだ続くぜ!」でしめる少年マンガと、いつか再びめぐり会うことを信じ別離で終わる恋愛マンガのようです。

 それから、登場人物の行動についても同じことを感じました。
 善人・悪人が明確に分けられていた前作。敵は勧善懲悪とばかりに罰を受けて終幕。
 それに比べると、今作はやや苦いものがあります。

 バーディーの上司メギウス警部。
 彼女を幼い頃より育て常に支援してくれた彼が、今回はバーディーを否定する側に回りました。
 アルタ人に行われていたジャンプ実験、その生き残りナタルを「無いのだよ、そんなものは」と認知せず。
 そして『大人』のバーディーも、それに食って掛かったりはしない。本心では納得できなくとも「時間跳躍能力を、備えていました・・・」と漏らすのみ。

 そして逆の立場で同じように意外な行動に出たのがヴァリック。
 バーディーの神経を逆なでする言動を繰り返す、憎らしいテロリスト。
 そんな彼が作動しようとする核を止めて人々の命を救い、自らの命を顧みないナタルを「死んだら何もならない」と否定する。

 彼らだけでなくナタル・カペラ・タセラ・ダスクさん(元テロリスト)など、今作ではキャラクターたちの善悪の区別がつけがたかったです。
 複雑ですが、現実に通じる・・・というよりそれが本当なんですよね。
 人間は、一つの側面で形作られているわけではない。
 ナタルがバーディーを殺そうとしていたのも、そのことが抜け落ちていたからでした。

 アルタ人を迫害する社会を生み出した、銀河連邦政府を否定するナタル。
 政府の作った法を、その裁きを信じずに復讐を始めて。
 その念は更に進み、政府に作られ使われる存在「イクシオラ」の否定にまで至る。
 自分もバーディーもそこに含まれているにもかかわらず。

 君のことが好きだからこそ「イクシオラ」として戦う君を見ていられない、だから殺す、という論理展開は何だかヤンデレ的ですね。
 更にバーディーに、君は「イクシオラ」として犯人逮捕時の戦闘を楽しんでいると指摘。
 自分も「イクシオラ」であるが故に、復讐のために力を振るうことに喜びを感じていたと語るわけですが。

 この時のナタルは「イクシオラ」というカテゴリーに目を奪われて、その人自身を見ていないんですよ。
 それが差別なのに。
 モスとヴァリックの「ウルグ人はタチが悪い」や「イクシオラは化け物」「死ぬまで戦う(同じくイクシオラについて)」という発言。
 人間をその人自身でなく、所属するカテゴリーで決め付け、蔑む。差別の根本を表していると思います。
 自分が一番憎む存在になっている、その矛盾にナタルは気付いていなくって。

 それを彼に気付かせたのがつとむ君。
 ナタルの「イクシオラ」は戦いしかないんだ、というカテゴリー攻撃では(テーマ的にも)反撃できないバーディーを救う彼は頼れるバディですね。
 自分の命をバーディーは助けてくれた。
 バーディーが自分を守ってくれたから、自分もバーディーを守る。
 バーディーは人を救える。それは「イクシオラ」だからではなく「バーディー」だから。
 つとむ君のこれらの言葉(要約)。数少ない台詞だけど、それだけに無駄は無いです。

 ナタルは、バーディーを守ろうとするつとむ君にかつての自分を思い出したのでしょう。
 そして、力の正しい使い方に思い至った。
 せっかく力があるのに、その使い道が言い訳なんてあまりにも勿体無いです。それを活かしてできることをしないと。 
 自分にしかできないこと――自分が唯一無二の存在である証。その人自身の象徴。
 それを見出すことができたナタルは、カテゴリーによる差別から開放されたのだと思います。
 昔の、「イクシオラのくせにバーディーはドジだなあ」と枠組にとらわれず笑えていた頃の彼に戻ったのではないかと。

 そして彼は「君に会いに行くよ」とバーディーに言い残して過去へと飛んで。
 幼いバーディーを救ったのが、この時のナタルとは。バーディーの初恋もナタルだったってことか・・・・
 父の変わりに死のうとしていた昔の自分に伝えるのは「生きて自分にしかできないことをしろ。彼女を守れ」ということ。
 それを最後に消えるナタル。
 その行方は知れないですが、生きていると信じられます。
 少なくともバーディーは信じて待っている。
 室戸さんも、また会いたいって思っている。自分の足で歩き出した翔子ちゃんも、変わらず慕っている。

 悲しみ、それをすりかえた憎しみは過ぎ去り、愛が残った。最後に人を救うのは『愛』
 そんな感じですかね。
 その真理に到達した早宮さんはすごいなぁ。
 今回は、本当に彼女に救われた感じです。
 前半なんて、ハッピーエンドへの道のりが見えず見ているのが辛くって。CM前の彼女の登場と、後半での語りに希望をもらいましたよ。感謝。

 そういえば、中杉さんとつとむ君の再会は実現せず。
 でもこれはバーディーとナタルと同じく、生きていれば可能性はあるってことですよね。
 
 辛い過去は消えず。現在には不条理がそこかしこに。そして未来は、良くも悪くも不確定で不安定。
 子どもの頃、思い描いた通りにはいかないけれど。
 だからといって絶望しないのが、きっと本当の『大人』
 そんなことを感じさせた今作「鉄腕バーディー DECODE:02」は『大人の話』だと思うわけです。

 前作のつとむ君と中杉さんのキスに比べて、今回のバーディーとナタルのキスは大人っぽかったですしね。
 ・・・最後にそれか(笑)
 まあ、総括も書きますんで最後じゃないってことで。
 それではー。

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