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ファイ・ブレイン 〜神のパズル _第2シリーズ 16話『憎しみの欠片(ピース)』感想 / テレビアニメシリーズ




 ネタバレありますので、以下は続きから。



 予告がメタなで酷かった(褒め言葉)のに、本編はえらく重い回でした(笑)。記憶をたどると、今後もその傾向は続いていたような・・・

 アナとイヴお姉さんのすっきりしない結末は、『ファイ・ブレイン 第2シリーズ】のこのタイミングのエピソードとしては順当なものだったと思います。
 今回のアナは、本物の【ファイ・ブレインの子ども】であるカイトらを、対するイヴはレプリカ・リングの実験体である【オルペウス・オーダー】の子どもたちを象徴していたのだと思います。
 どちらが悪いでは無く、どちらも辛く苦しい。苦しみの形が異なるだけで。

 イヴはアナの才能に魅せられ、焦がれ、それを持たぬ自分に苦悩し、やがてアナを憎むようになった。一方アナはそんなイヴの心の内を全く知らなかった。
 アナに怒りをぶつけるイヴは、カイトを非難した【オルペウス・オーダー】を思い起こさせます(完全な悪人でないところも、彼らと同じです)。カイトもフリーセルを傷つけた自覚はありませんでしたしね。
 そういう配置である以上、最終回を迎える前にこの姉弟が円満解決はできないのだと思います(フリーセル以外も、まだ誰一人救われていない)。ただ、カイトのセリフにあるように、未来の可能性は残されている。

 そんなメタな話はさておくとしても、カイトのパズルバトルを経過したら姉と弟が和解するというのも妙な話ですしね。はっきり言ってカイトは関係ないのに、これで解決できる方がおかしい(笑)。
 そういえば珍しくカイトがパズルを解くのを嫌がっていましたが、それは彼にとってパズルが人とつながるためのツールであり、解くことでイヴの負の感情に触れることが嫌だったからだと思います(もちろん、アナが傷つくことが予想できたというのもあるでしょうが)。

 優しい(養)父母を喪い、ジンやルークと別れ、その後は親しい友人を持たなかった(風な描写の)カイトには、人との交流に飢えている節があると思うんです。
 憧れつつも手に入れられなかった人との触れ合いに、ちょっと美化が入っていると言いますか(笑)。人と交流することは基本的に良いこと・素敵なことだと思っているのではないかと。
 喧嘩したりとか面倒事に不本意ながらつき合わさせたりとか、嫌なこともあるのですが、実際の交流をほとんど経験していないせいで、カイトにはそこのところがあまり見えていないような気がするんですよね。

 それと、人間関係を維持するには、仲良くしていたいって思うだけじゃだめで諸々の努力が必要だったりするんですが・・・そのへんにも考えが至っていない気がします(ノノハ・ルーク・ジン等に対して、関係を維持すための努力を自分からしている描写がほとんど見られない)。
 これは不幸な境遇(英国でクラスメートに疎まれていたのも含め)の結果なので責めるのも酷な気もしますし、現在の仲間との関係を期に覚えていけば良い話なのですが。
 今後、フリーセルに対し積極的に自分から向かっていくあたりは成長とも思えます。

 ――話をグラム姉弟の方に戻しまして。
 アナを激しく糾弾したイヴですが、ミゼルカから弟を守りました。
 アナから絵を奪いたかった、あるいはアナに復讐したかったのなら、庇わなくて良かったはずです。では、彼女の本当の望みは何だったのでしょうか。
 思うに、彼女はただ苦しくて、その苦しみから解放されたかっただけなのではないかと。
 そして彼女のその苦しみは、アナのような才を持たない自分自身への失望が根源だったのではないでしょうか。

 こうなってくると、原因を取り除いて救われることはできない。それでやむなく、自分を失望させるきっかけとなった弟の才能を取り除こうとしたのではないかと。
 その強引な転嫁を正当化するためには、アナは憎まれて当然の悪党でなければならなかったのでしょう。
 そうでなければ自分は単なる八つ当たりをしただけとなり、罪悪感を抱えなければならない。解放の先に、また別の苦しみが待っている。それでは彼女の本当の望みは叶わない。

 それとは別に、弟が自分の苦悩をまったく理解していなかったことについては本当に腹立たしかったのかもしれないですが。
 自分が苦しい時に楽しそうな人を見ると、それだけで苛立つってことはありますから(笑)。
 八つ当たりではありますが、その怒りがあったが故により深い憎しみを弟にぶつけることが容易だったのかもしれないです。

 イヴがそんな状態で有る以上、ノノハの「どうして比べるの?」という言葉は解決にはつながりません。ノノハの言うことは全くもって正しいのですが、イヴは正しいことが分からず苦悩しているわけではないからです。
 苦痛から解放されるにはアナを憎むことが一番の近道で、これまで耐え続けてきてもう限界にきてしまった彼女には、他の道を探す余裕は失われていた。
 カイトら【ファイ・ブレインの子ども】と競い合うことのなかったノノハは、今回、アナの側にもイヴの側にも立てず、友好な解決手段は見いだせなかった。
 まあ、彼女は精神科医でも何でもない一介の高校生ですので、何も出来なくても仕方ないんですが。

 カイトが「からっぽだ」とイヴのパズルを評したのは、彼女の憎しみは本当はアナに向かっていなかったからなのではないかと。
 アナのようになれない自分が哀しくて苦しい。この苦しみから解放されたい。誰も私の苦しさをわかってくれない。
 それがイヴの本当の気持ちなら、あのパズルの絵の中で泣いているのは――そう描かれるべきだったのは――イヴ自身でなければならなかったはずです。

 ラストの姉弟の別れの場面。
 姉と言葉を交わしたアナの「イヴはもう描かない」という言葉が印象的でした。「描けない」ではなく「描かない」。挫折では無く、自ら歩むことを辞める。
 個人的には、それはそれでありだと思うんですよね。イヴの絵が好きなアナからすれば哀しいことですが、イヴの才能は、絵画とは別のところにあるのかもしれないわけですし。
 それに、今度こそ才能の有無なんて問題から解放されて、純粋に別の楽しいものを見つけてそれに打ち込むのも良いのではないかと思います。下手の横好きで何が悪いのかと(笑)。

 それはそれとして、イヴの「アナの絵が好き」という言葉は本心だったと思います。好きだからこそイヴは憧れ、そうした絵を生み出せない自身を呪ったのですから。
 自分の本当の気持ちを認められるようになった彼女なら、また自分の苦しみと向き合い、今度はそれに負けず絵を描いていくこともできるかもしれません。
 苦しみは完全にはぬぐえないかもしれませんが、絵が好きな気持ちは確かでしょうから、それも一つの道でしょう。

 思いのほか長くなりましたね・・・カイトのくだりが余計だったかな(笑)。
 それにしても、回想のあの御殿は本当にすごい・・・・。再放送ですが初見の時と同じことを思いました(笑)。


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