閃光のナイトレイド_第5話『夏の陰画』感想 / テレビアニメ



一言結論:魔都の闇はどこまでも深く濃く、呑み込まれた者は消え行くのみ
ネタバレありますので、以下は続きから。
1週以上遅れてますのでサクサクと。
前回の軽快なお話から一転、重苦しい内容。
視聴者にさえ多くのことが明かされず、尋問中の葛のように周囲の人物の言葉から『西尾』という人間を推測するほか無い。
でも名前すらわからないまま(普通に考えて偽名でしょう。葛は『友人』とだけ)、その死で強制的に幕引きという。
視聴者まで振り回すとは、桜井のオッサンの言うように全く剛の者です(笑)。
そん男の元恋人・愛玲さんを葛が気にかけていたのは、きっと彼女と自分を重ねたからなのでしょうねー。
西尾に惹かれるも振り回され、去った後も思いを断ち切れない。「絶対に来ない」と口にしつつも。
自分の姿を見るようで、そんな女性を放って置けなかったのだと思います。
しかし好意や親近感による補正抜きだと、西尾はロクな奴じゃない気がするんですけど・・・。友人としても恋人としても。
最後に倒れた彼に誰も駆け寄らず人々が退くのは、結局彼には信頼できる同志がいなかったってことなのではないでしょうか。
愛玲さんと痛みを分かち合おうとしてか、自らの身体に傷をつけたという西尾。子どもの頃から、そんな質だったようで。
そういう男なら、皆が労働者になって不公平の無い世の中を、と考えるようになったのはわからなくはないのですが。
ただ、自分でつけた傷――覚悟を決めて引き受ける痛みと、心ならずもついた傷――強いられた痛みは、別物って気がするのですけどね。
葛や愛玲さんにとって傷痕は、自分と西尾を繋ぐもので。身体に残るそれが、彼への未練は断ち難くする。
でも西尾の方はというと、葛を思い出しもせず、愛玲さんを躊躇い無く捨てて行く。
彼にとって傷とは、身に刻んで痛みを味わった時点で既に用の済んだもの。痕には何の価値も無い。
そんな風に見えました。想像ですが。
でも、今回は想像や推測を巡らせるしかない、はっきりとした情報があまりにも少なかったので。
皆、多くを語らず、真実は魔都の闇に呑まれて。それは誰にも知られることなく消えていく。
今回のエピソードには『わからない』という要素が重要だったのだと思います。
だから雪菜お嬢様は出番が皆無、1カットも(予告にくらい出ても・・・)映ってらっしゃらない。
モヤモヤした状況を造るにあたって、サイコメトリングは鬼門というか反則というか・・・身も蓋も無いというか(笑)。
それに、このエピソードには雪菜は清涼感が有りすぎるんですよ。
今回ばかりは愛玲さんの気だるげな仕草の方が雰囲気にマッチしてベターですな。どこか疲れた風にタバコを吸う様子が色っぽい・・・いや、これはいいわ(黙れ)。
そういえば、彼女も日本人だったんですかね? 中国を『この国』とか言ってたし、初対面の葛と日本語で会話始めてたし(家主ドイツ人なのに)。
・・・何か、話が逸れたので戻しますが。
今回は直接的な(言語化された)情報が開示が少なかったわけですが、その分、画面構成や道具を使っての表現(比喩表現、中でも暗喩というやつですな)があちこちに見られたと思います。
以下、それを箇条書きであげてみますねー。あ、めんどうなので敬称略です。
書いてから気付いたのですが、自信の無い箇所は弱腰になってました(笑)。
●冒頭とラスト等に見られた、上海の『昼』と『夜』
始まりと終わりのシーンに、メインキャラが登場しない。今回のエピソードが描いていたのは上海という、街。
平和そうな『昼』の顔だけではなく、『魔都』と呼ばれるに足る『夜』の顔が有る。
葛の誘拐、武器の取引、西尾暗殺、全ての事件は『夜』。太陽の眩しい昼の街から、暗室の葛(スパイ)へ映る。明暗の対比。
●他者の痛みを形だけ感じて、想像しない西尾
西尾は「待っている人がいる」と聞いても顔色を変えない。同じ箇所に傷を刻むという行動をとりながら、本当のところは他人の痛みに無関心。
それと対照的なのが「竹を踏んだ」と聞いただけで大きく顔をしかめる葵と風蘭。
●キャラクター周辺に配置された色
愛玲の部屋は、布団・カーテン・床に置かれた袋等、多くの家具が赤系統の色。この『赤』は、共産党の暗喩。
その場面の彼女の服も赤みがかっている。首にかけたタオルまで。初登場のシーン、葛を出迎えた彼女のいた室内も赤系統(絨毯・イス・シャンデリア)。
西尾の職場は黄褐色(茶色)、監禁された倉庫内は青、屋上は灰色。他の場面では『赤』は控えられている。西尾の眼鏡も赤系。
(ただ、西尾が暗殺された風呂屋も、内装外装が『赤』。この建物より弾き出された彼は、もしかしたら国民党ではなく味方から口封じで消されたのかも?)
最後に愛玲が登場する場面。窓の外からのあおりの為赤いベッドや床の袋は映らず、カーテンは彼女の影で赤みが薄れて見える。
さらに彼女自身も黄色い服に変わっている。西尾からの開放を意味している?(後述)
●愛玲の部屋の窓
彼女の部屋は二階。その真下の部屋の窓枠は、格子のような形状。西尾に囚われている彼女の姿を表しているのか?
愛玲が窓を開けるのは「怖くない」と言う台詞や、(西尾が彼女を捨てたことが明らかになった後の)最後の場面。恐怖等からの開放と窓の開閉は連動している。
●道
Bパート頭の三叉路。
両側が赤い瓦屋根の道が、白いビルの手前で二本に分岐。新しい建物にぶつかって、古い道が別たれたようにも見える。
道を違えた葛と西尾のイメージ?
愛玲の部屋を出て、彼女と葛が歩くシーン。
裕福な『搾取階級』の家は光に照らされ、二人の歩く道は徹底して影に覆われている(塀で区切られてもいるが)。明暗の対比。
●タバコと愛玲
部屋で喫煙する愛玲。
室内の灰皿は窪んだ形。吸殻は、抜け道の無い穴の
底に位置する。
そこで煙を立ち上らせるタバコは、今も西尾に囚われたまま、彼への想いが燻っている彼女と重なる。
夜の取引の場面。西尾はタバコをうち捨て、それを踏み消さず放置する。自分への未練が燻っている愛玲を置き去りにした状況の比喩。
●西尾の死にまつわる演出
二人が向き合う場面、暗い川に街の明かりが浮かんで見える。灯篭流しを思わせる光景。
西尾がたとえられた『夏』の虫である蛍とセミ(もしくは、『虫』そのものが『弱者』の象徴か)。
葛に止まった蛍は飛び去り、セミは地に落ちて死ぬ。後者の足の動きは西尾の最後と重なる。
最後、西尾に降り注ぐ雨は死に水。中盤の「お湿りにもならない」の台詞を受けた展開。
●その後の葛と愛玲
物陰で愛玲を見張っていた葛は、日の当たる道へ出て、画面奥(先・未来)へ向かって歩いて行く。
愛玲はまだ部屋の中、外には出ていない。
けれど彼女のアパートと隣の建物に挟まれた路地の向こう(画面奥)には、明るい景色が見通せる。
赤い服(前述)はやめ、窓からタバコの煙を外へ吐き出す姿からは、彼女次第で未来は明るくなるのではないだろうかと思える。
あと、サブタイの『陰画』は『因果』にかけてるのかも。
こんなところですかね。・・・ふう、疲れた。でも楽しかった。
そんなわけで、6話も放送済みですのでなるべく早くあげたいです。・・・なんか前にも同じこと言った気もしますが。
それではー。
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