DARKER THAN BLACK -流星の双子- _第12話(最終回)『星の方舟』感想 / テレビアニメ
一言結論:叶わなかった夢にだって意味は有る。君の願いは罪じゃない
ネタバレ有りなので、以下は続きから。
最終回感想へ行く前にちょっと注意書を。
今回の感想は独自の解釈が比較的多くなっております。予めご了承ください。
と、前置きをしたので、遠慮なく想像力全開で行きます。妄想にならない程度で(笑)。
スオウが何かを選択することで物語が決着し、それが前期での黒の選択の肯定となるのだと予想していたのですが。
そこは外れでした。
でも、二年前の黒の答はスオウがちゃんと肯定してくれたと思います。
彼女の意思では無かったかもしれませんが、彼女の人生そのものによって。
マダムの「夢をかけた」という言葉があるように、コピー(造られた存在)には造り手の夢が有って生み出されたもの。スオウも方舟の地球も、そうして生まれた。
シオンは認めませんでしたが、スオウに与えた偽りの記憶も、そしてスオウ自身も彼の願いを反映したものだったのでしょう。
スオウを感傷的で契約者らしからぬ、と評したシオンは、おそらく一般的な――嘘つきだったのではないかと。
マダムの方も、方舟はこれから地球(オリジナルの)に襲う危機を見越して造った保険。或いは、それで地球の人類と契約者が滅んだとしても、その存在の証を残すためのもの。
どちらにしても「地球を失いたくはない」という彼女の『願い』を叶えるために「なりふり構わず」造り出したものだと思います。
でも、双方ともただそれだけの存在ではないのです。
誕生した瞬間から、生み出された『それ』は一つの存在となって。
誰かの支配下に置かれたりしない。たとえ造り主といえど、思うままにすることはできない。
だからスオウはシオンとは別の人間であり。そして、方舟は地球から遠ざかっていったのでしょう。
マダムやシオンの行動は、親が自分の果たせなかった夢を子どもに託すようなものではないかと思います。
スオウも方舟の地球も、実現しなかった『夢』の具現化。
それは被造物からすれば、勝手なことかもしれない。「それはあなた達の事情じゃないか、自分達に押し付けないでくれ」と言われても仕方ない。
けれど、親のエゴと切り捨てられるものでもないと思います。
例えば、飢えに苦しんだ少年期を送った人が親になって「自分の子どもは食べるものに困らないようにしてやりたい」と望むのは身勝手とは言い切れないのではないかと。
だから、シオンやマダムを間違っていると断じることはできないと思うのですよ。
それに、彼らは生み出した存在の自立を認めていました。
マダムは離れていくもうひとつの地球を静かに見つめるだけで、干渉しようとはしなかった。
シオン少年も、自らが造ったコピーのはずのスオウを『姉』――自分より先に生まれた少女――と最期に呼んだ。
自分が求めて生み出した存在が、勝手に(造った側からすれば)動き出すことを、良しとしたのです。
それはおそらく、『夢』は実体を持った時点で意味がある、ということなのでしょう。
彼らはこの世に誕生したそれに、自分達の『願い』を託した。それで満足したのだと思います。
マダムは「方舟地球は、元の地球が滅んでも人類を存続させるための保険」と考えている節もあります。
でも、それだけだとすると、彼女の行動にやや不自然さを感じるんですよね。
絶滅回避が全てなら、目的は果たしたわけで、もう諦めていいはず。自分達の地球が滅びようが問題ないはずです。けれど、彼女は『組織』として活動を続けている。
それは、あの方舟地球という『夢』の存在に支えられているというところがあるのではないかと思うのです。
現実とは違っているけれど、「自分がかつて夢見たもの(『願い』)が、この宇宙の何処かにちゃんと在る。決して存在し得ないものではない」というのは、それだけで元気をもらえると思うのです。
その希望は、ままならない現実を生きる力になる(シオンの場合は、それによって穏やかな死を迎ることができた)のではないかと。
具体的な利益が無いとしても、『夢』っていうのは大事だと思うのですよ。
『ダーカー』には『星』という重要な要素がありますが、その系統、天文なんてもろにそんな感じだと思うのです。
確かに、星の研究をすることで地球のことがわかるとか、宇宙に進出することで新たな土地や資源が得られるとか、そういう狙いはあるのでしょうが。
でもやっぱり、天文学の原点は星空への憧れ、ロマンですよ!
他の物事だって原点はそれかもしれないですが、天文は即物的とは言いがたいだけに尚更『夢』とロマンが支えている世界なのではないかと思うのです。
・・・・・まあ、実際に活動するとなると、色々・・・うん、色々有るのでしょうけど(何の話)。
・・・えー、話を戻して。
前回もちょっと考えたのですが、マダムの昭和風未来スーツと、目立って仕方ない未来カー(活動に支障をきたすだろう、あれは・・・)。
あれはやっぱり、実現しなかったかつての『夢』を表す記号なのだと思います。
若き日に夢見た世界は現実にはならなかったけれど、それはちゃんと今の自分の力になっている。
あの青春は無駄じゃなかったんだと、夢破れたオジサンオバサンは言っておられるのです、多分(笑)。
そんな中高年組に合流する未咲さん。スーツ(型にはまったイメージ・サラリーマンの記号)を脱いだ新たな姿はカッコいいです。むしろ若返ったような?(微妙に失礼)
前期では展望は無いけど希望は捨てない、という『若者』的な立ち位置だった彼女が。今期の最初はトバされてくすぶるという挫折を経験して。最後に、裏組織の一員になった。
目的――『夢』や『願い』――のためなら、汚いこともしなければならないだろう位置に自ら身を置いた(アメリカに支配されている状況では、おそらくそうなるでしょう)。
これは、青臭さが抜けた、ということなのだと思います。彼女も、若者を支える側になったのかな・・・感慨深いです。
と、長々語ったこれらのことが、黒さんとスオウにも繋がってくるのです(前置き長っ!)。
まずは、スオウ。
この『流星の双子』は子どもだった少女が大人になる姿を描いたものだと思っていました。けれど本当のところは、コピーだった彼女が一人の人間になる姿を描くものだったのだと今は思います。
そのためには、あの旅と仲間(シオンにも今の自分は仲間の影響みたいに言ってましたね)は不可欠だったのでしょう。
記憶を消され、見知らぬ場所に送られてしまう彼女には、確かに胸が痛みました。
でもきっと、それこそが人間。思い通りにならない状況でも、必死に生きて足掻いて、そして死ぬ。
それに、消えてしまいましたが、その記憶が有ったから彼女は人間になれた。そして、こんどこそ彼女自身の人生を生きるのでしょう。
黒がスオウに「俺はいつでも側にいる。また旅を続ける(意訳)」とかけた言葉は気休めなどではなくて。二人は同じ宇宙で、どちらも人生という旅を続けていく、という意味なのだと思います。
そしてもうひとつ、一人の人間として確固たる存在となったスオウは、特殊な力を持った銀でも完全には思い通りにできなかった。
その証拠は、記憶がなくなっても、奪えなかったものが有ること。それは、スオウ自身の想い。
それがあるから、彼女は理由のわからない寂しさを覚え、星空を見上げる。名前は思い出せないかもしれないけれど、今も黒を見ている。
だから黒も、銀がどうなったにせよ(この辺はDVDかなぁ?)、世界にどんな災厄が起きようと、酒に溺れたりせずしっかりと生きていかないといけないわけです。
かつて、銀は守れなかった。けれど、スオウは幸せに生きている。きっとがんばって、人生を歩んでいく。
そんな生活を送っていながらにして、自分のことを忘れずに見てくれている。記憶もないのに。
これは、黒は頑張るしかないですよ。つーか、しゃきっとするように(笑)。
約束破っちゃダメだよ黒さん、スオウはちゃーんと見てるんだから(笑)。
あ、今後黒が女性を落とす度に、宇宙空間ぶち抜いてライフルの弾が飛んでくるとおもしろいですよね(無理)。
というわけで、今度は黒さんについて。
先ほど述べた、叶わなかった『夢』や『願い』にも意味があった、というのは二年前の黒さんの選択を肯定するもの。
確かに、契約者が絡みのここ二年の悲劇(銀のことも含む)は、黒が違う答を選んでいれば起こっていなかった。
けど、非情な現実の前に潰えてしまったからといって『夢』を否定することはできない。だから彼の決断も、きっと間違いではない。
あの時、未来を選んだのは確かに彼です。けれど、未来は黒さんの所有物ではないのだから、彼の思い通りにならなくて当然。罪を一人で背負うことはないのです。
黒さんの望むようにはならなかった世界。それは、造り手たるシオンの操り人形ではないスオウと同じ。
スオウは彼女の意思で行動して良い。世界だって、そう。一人間の手の中に有る方がおかしいのですよ。
でも、「こんな世界になることを望んだわけじゃない。納得がいかない」と思うなら。
それなら、自分の描いた『夢』の実現の為に死力を尽くせ、と。自分ばっかり美少女と逃避行してるなんてズルイだろ、と(笑)。そんな感じではないでしょうか。
彼なりに「銀を殺す」という方向でがんばっていたみたいですが、それはどうも自責(後悔)に突き動かされてのようで。ちょっと後ろ向きっぽかったなーと思います。
何を願おうと、それは罪ではない。というのは三号機間の方でも描かれていたように思います。
葉月に向かって「自分が『変態』であることを認めろ」と語りかける弦馬。
『変態』っていうのは要するに、嗜好――こうしたいという願望(葉月さんの場合、同性と恋愛したいとか)――がマイノリティーだってことですよね。
『変態』の自分を恥じることはない、というのはテーマ的には正しい気がしますが・・・・この人は、やってることがダメだからなぁ・・・・
堂々としつつも他者に迷惑をかけなかった葉月さんが勝利したのは、その辺の要因があったからですかねー。
最終話の主人公とのキスがこの人、っていうのもすごいな・・・(笑)
では、次はテーマ的なことではなく残された謎についての解釈。やっぱり自己流が多めで。
まずは、銀の能力。
「天国に送る」と言われる対契約者用の能力。これは、方舟地球に契約者たちを送る力のことだったのでしょう。
もうひとつの地球を作る際。世界の記録はドールネットワークで。人類の記憶はMEネットワークで集めたそうです。
ここで気になるのが『人類』という言葉。この作品では、『人類』は『契約者ではない者』という意味で使われることがありました。
とすると、マダムとシオンには、契約者を方舟に移す手段が無いということになります。それを補っていたのが、銀なのではないかと。
彼女によって契約者であるスオウとジュライが方舟地球へ送られたので、少なくともそういう能力は有るわけですよね。
両者が協力関係を結んでいたかどうかはともかく、結果だけを見れば、方舟地球を造るのに銀は手を貸していたのかな、と思います。
まあ、平和な世界へ移住させてくれるといっても、自殺させられるのは嫌でしょうが・・・・
次に、スオウの能力。
これは、シオンのように物体をコピーする能力だったということでしょうか。流星核は何か関係無かったようですし。
もしかして、シオンのライフル(ターニャ狙撃に用いたもの)を以前スオウはどこかで見ていて、それをコピーしたのかもしれませんね。
二人の使っているそれは、右利き用と左利き用という『違い』が有ったということなので。
あと、オープニングとエンディングについても語っておきますと。
OP「月明かりの道しるべ、雲を越え僕に届け」という歌詞からすれば、これは黒さんの歌だったのかもしれないなーと。絵はスオウばっかりでしたけど。
銀を失って真っ暗闇を一人歩いていた黒さんの前に現れた『月』がスオウだったのかなーと思います。
李くんモードなら一人称は『僕』・・・だったような(いい加減)。
そして、男声のエンディングの方が意外とスオウの歌だったのかもしれないと思います。
「生きる意味を知るだろう」とか、ラストの「このまま二人のまま、いられたらいいのにな」とかの歌詞がそんな気がするような・・・(聴いただけなので、小さな間違いはご容赦下さい)
『二人』って、ジュライや猫ペーチャは?って感じですが・・・ほら、恋をしている女の子は相手以外が見えない時があってもおかしくないですよ、うん(笑)。
最後。イザナギとイザナミが出会うことで起きるという災厄。
おそらく、最後に目覚めた銀に似た少年?のことだと思います。シオンが造った銀のコピーなのでしょうか?
これについては、三期の伏線、と見る向きもありますが、個人的にはそうである必要は無いと思います。
「人類と契約者の生きる世界には、まだまだ問題が山積み。しかも、このままだと何かヤバイことが起きるんだよ!」
みたいなことを伝えるための設定でもいいのではないかと。無論そのあとには、
「でも大丈夫、黒も未咲さんも諦めたりせず、仲間とともにがんばっているんだ!」
って繋がるわけですよ(笑)。
まあ、三期につながるならそれはそれで歓迎しますが(節操無い)。
そう考えればこの結末は、ハッピーエンドとは言えなくても、バッドエンドとも言えないのではないでしょうか。
正直、『ダーカー』で完全なハッピーエンドは期待してなかったから、その辺は別に不満は無いです。
この作品だと、良くて二人で逃避行くらいじゃないかなー。
それに、切なげな終わりが似合う気がするというか・・・何もかも解決するというのが想像しにくいと言うか。「あの危機は乗り越えたけれど、世界は変わらない。そんな世界の中、彼は今も戦っている」・・・みたいのが比較的妥当なのではないかと。
黒さんのハーレムエンドとか、黒さんが誰かと結婚して丘の上の白い家で子ども達に囲まれて幸せに暮らす、なんて誰も期待していないはずさ!(極論)
と、言うところで書くことがなくなって来ました。
それでは、最後にスオウについてちょっと。
少年の夢から生まれた少女は、一人の「人間」となり、多くの人々の願いが形になった世界で生きることになりました。
そこでの人生が、幸せなものとなることを願ってやみません。
さて、今回は推測とか自説が多かったです。
「あの点については、どう考えてるの?」なんていう疑問点の有る方は、お気軽にコメントくださいませ。
別に「いや、その意見は矛盾している」という真っ向からの反論もウェルカムです。
マナーさえ守っていただけるのであれば(笑)大歓迎ですので。
では、感想はこの辺で終わりたいと思います。
制作の方々、素敵な作品をありがとうございました。まずは、ゆっくりお休み下さい。
その後、次の作品(『ダーカー』の続編でも全くの別物でも)が見られるのを楽しみにしています。
それではー。
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