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DARKER THAN BLACK -流星の双子- _第11話『水底は乾き、月は満ちる・・・』感想 / テレビアニメ

 

一言結論:あなたには、それが何に見えますか?

 ネタバレ有りなので、以下は続きから。



 目は、ただ見るのみ――物体に反射した光を感知するための器官。
 受け取ったその光を記憶と照らし合わせ、或いは情報を元に推測し、それ――今見ているものが何なのかを判断する際には、脳が関わってきます。
 脳の判断は人それぞれで。自分が何を見ているのかは、その人自身が決めている。だから、同じものを見ても感じ方は人によって異なる。
 今回は、そんな例が多くあったように思います。

 制作者のスオウにとってはペリメニだけど、ジュライからすれば肉まん。
 未咲さんからすればリスだけど、本人はモモンガだと反論する。
 女の子のスオウを、少年だと思っていた変態(猫ペーチャに全面同意)。
 マダムはリカルドに今でも親しみを感じるけど、彼からすれば「もう恋人ではない」。
 三号機間にとっては危険なイザナギとイザナミも、アメリカには魅力的に見える。
 未咲さんには黒は耀子殺害犯とは思えない。でも、葉月にとってはどれだけ憎んでも足りない仇。
 銀の変化に罪悪感を抱いたり「まるで別人」と評するかつての仲間達、しかし「進化」と歓迎する者もいる。
 スオウの偽者の記憶を博士はプレゼントだと言うけれど、スオウはそれと違うことを思ったようですし。

 と、このように同じ物事も、受け取る側によって様々な解釈がされる。それは、ままあることで。
 たとえば自分は、冒頭の銀(多分)やマダムの戦闘服がハイヒールだったり、契約者ではない未咲さんが頭部をガードしてないのが気になってしまうのですが(笑)。
 作り手の側からすれば、仮面の暗殺者なんてものが存在する世界でそんなものは瑣末ということなのかもしれません。
 その例はさておき、この辺を踏まえればパブリチェンコ博士の感覚も、突き抜けてはいても突飛ではないのではないかと思います。

 自分のコピーを軽んじながら、スオウのことは娘として大切にする。
 シオンのコピーだとわかっていて、記憶も自ら植え付けておいて、「女ならつまりスオウ」っていうのは明らかにおかしい。
 でも、整合性以上に優先すべきものが彼にはあった、と考えれば説明がつくのではないかと。
 それが、スオウの生存。娘の死を無かったことにできるのなら、おそらくは理屈なんてどうだって良かったのでしょう。
 科学者の論理とは到底思えないそれを疑いもしなかったのは、父としての感情のなせる業。
 成長した娘を見たかった彼にとって、スオウは甦った実の娘以外の何者でもなく。疑う余地など無い・・・というか、疑うことを放棄したのだと思います。
 きっと、否定する者がいたとしたらそちらの方が間違っている、くらいの勢いで。

 この人が2年前、スオウが生み出された時に妻を呼び戻そうとしなかった(彼女はスオウの存在を知らなかった)のは、もしかしたら自分の論理が破綻していることはどこかで感じていて。
 でも、間違った論理でも貫き通そうという意思が有ったのかもしれません。そうだとしても、自己中心的であることに変わりはないと思いますが。
 彼はきっと、蘇芳もスオウもちゃんと見てはいなかった。スオウを見るためには、蘇芳の死を認めなければならない。だから、スオウを見てあげられなかったのでしょう。

 大切な人間の死は、どんなに穏やかなものであっても受け入れ難いもの。惨い死ならば尚のこと。
 葉月の黒への怒りは(誤解だろうけれど)わからなくもない。きっと博士の行動も同じ理由、なんですよね・・・・
 でもそれは、彼が悪い人だったからではなく、弱い人だったからではないかと思います。
 スオウからすれば、自分と実の娘を混同しつつも最後まで父親として愛してくれた。
 母親は、コピーという彼女の真実を受け止めたからこそ、自分を受け入れてはくれなかった。
 そして双子の弟だと思っていたシオンは、己のオリジナルであり、作り主。
 何というか、ソーゼツな家庭ですなぁ・・・

 今回発覚した、スオウはシオンのコピーという話。
 イザナギとイザナミの接触は、もしかして銀とスオウの出会いでも成立するということなのかなー、という疑問が。
 肉眼で見る月は黄みを帯びていますが、太陽を黄金・月を銀と例える表現は文学等にはよく見られます。
 オレンジ色・・・赤みがかった、或いは黄色と赤(蘇芳色はこの系統)の混ざった色に染まる月。
 これは、スオウと銀の邂逅を思わせるような・・・。全てが終わった時、果たして月は何色をしているのでしょうね。

 あと、マダムの昭和風味(外国人の表現にその単語はどうなんだろう)の未来人的コスチューム。
 まあ、単に未咲さんが「女が年とともに格好を気にしなくなると言うのはこういうことだったのか・・・私もオッサンくさいとよく言われるし、気をつけなくては」と思うシーンという可能性もありますが(酷)。
 実はこの服は、先達が思い描いた明るい未来のイメージというか、その象徴したものなのかもしれないと思いました。
 それが、実際の現実とは最早相容れない、否定なものとされるのか。それとも、実現しなくてもかつて抱いた希望には意味がある、という肯定的な意味合いのものなのか。
 そのへん、自分にはまだ読みきれないですねー。今後のマダムの行動次第というか。ここまでの彼女の言動だけでは読みきれないのがちょっと悔しいです。
 あと、彼女の足首はどんな感じなのか、猫ペーチャさんのコメントが聞きたい(笑)。

 その他のポイント。
 弦馬は・・・・スオウたちの位置を割り出すところまではそれなりにカッコよかったっぽいのになぁ・・・(笑)。
 スオウが黒との約束を破ってライフルを撃ったという重要なシーンだとか、「どうせ死なないよね」って台詞はどうなんだろうとか。
 そのへんでさえ、相手がこんなんだとそういうの全部どうでもよくなって許される気がしてしまう・・・(笑) まあ、同じ場所を二度撃ってれば確実に殺せたはずなので、手加減はしているのでしょうが。
 未咲さん、BK201は無理でもこの男は逮捕した方がいいですよ・・・イリヤみたいになる前に。
 でも、「目がこすれねえ!」のシーンははおもしろくって輝いてたと思います(二次元はおもしろければ大抵許す主義)。
 ジュライくんは、本人的には肉まんばっかり食べてることになるんでしょうか? あと正座できるのはすごいぞ英国人。
 たぶんこの子も弦馬の守備範囲なので危険です。未咲さんー!(またか)
 マダムの能力と対価が気になるなぁ・・・電撃っぽいように見えましたが。
 あと、葉月さんは死なんでほしいです。

 最後に、これは全くの推測なのですが。
 自分に植えつけられた記憶は、シオンからのプレゼントだという父の言葉に、それは違うと感じていたスオウ。
 彼女が何を思ったのか、今回の話では明言されませんでしたが、そのへんを推測してみます。
 あの水族館の記憶は、プレゼント――贈り物――ではなく、彼自身が欲しかった物なのではないでしょうか。
 仕事ばかりでなく、遊びに連れて行ってくれる父。素直に笑いかけてくれる母(過去のママさんはどこかシオンにぎこちなかったような・・・)。
 死ぬ事無く、隣で元気に笑ってくれる姉。そして、子どもらしい感情を持った自分。
 そんな当たり前の家族を求めていたのではないかなーと。
 それを自らのコピーに贈ることで、自身の欠乏を満そうとしたのかもしれない。
 そんなことを、思いました。

 では、今回はこの辺で。
 どうなるんでしょうね・・・ラストは。楽しみにしつつ、待とうと思います。
 それではー。


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