DARKER THAN BLACK -流星の双子- _第10話『偽りの街角に君の微笑みを・・・』感想 / テレビアニメ
一言結論:キミは、世界にたった一人の、普通の女の子
ネタバレ有りなので、以下は続きから。
喪失が痛いのは皆同じ。でも、痛がり方は人それぞれ。
そんなことを思った回でした。
大切なものを失えば、誰だって痛い。それは皆に共通の、普遍的な感覚。
感情は無いとされる契約者も、人間性を失っていないはずの一般的な人間も、そして作られたコピーも。
でも、そこからの行動は各人で違う。
自分の肉体を奪われた猫は合理的判断などかなぐり捨てて博士に飛びかかり、輝子を亡くした葉月は静かに黒への報復を誓う。
ジュライがスオウに自主的協力するのは、流星核関連の事情も有るのかもしれませんが、MI6の仲間達を失った経験がきっと無関係ではない。
どれも痛みが起点にある行動。なのに契約者だけを見ても、それぞれ違う。
それでは人間の方を見てみると。
敵の手中にある銀を追う黒は輝子に非道で、去った李くんを未咲さんは今も追いかけている。
娘の死という同じ体験をしている夫婦でさえ、その行動は食い違っています。
父は娘の再生を望み、母はただ一人のその子の死を悼んで代用のものなど求めなかった。
やっぱり人それぞれ。
コピーと明らかになったスオウだって、痛みを感じるのは同じ。
母を――そして自分自身の存在を無くしたくなくて。だから、水族館という希望に縋ったのでしょう(それすらも、偽りだったのですが)。
『痛み』という共通する感覚から始まっても、それぞれ行動が異なる。きっとそれが個性、あるいは独自性。
普遍性と独自性。両立し得ない要素のようで、実はヒト(契約者も一般人もコピーにも)にはどちらも不可欠なのです(無論、だからといって意図的にスオウに『痛み』を与えたシオンの行いは許されるものではないと思いますが)。
今回スオウが立ち直れたのは、未咲さんと仲間達(特に黒さん)がそこをきっちり押さえてくれてたからなのだとおもいます。
スオウにとって未咲さんは、自分達に気さくに話しかけてくれる人で。
お腹が減ってるだろうと(明らかに朝食は食べてない状況)、当たり前のように食べ物をくれる。しかも、誰もが簡単に買える肉まん。
スオウが少女だと見抜いたのは、黒のことを語るスオウに女同士の親近感・・・みたいなものを感じたからではないかと思います。
要するに、正体不明のはずの自分を、ただの『女の子』として扱ってくれた。
作られた存在だからと見下したりせず、化け物呼ばわりすることも無く、自分(人間)と同等の存在として見てくれたのです。
当然のことのようで、それは大きなことだと思います。
思ったよりショックじゃなかったのはコピーだから?というスオウの疑問への答えも根本は同じ。
「契約者とかコピーとか関係ないんじゃないかな。泣きたい時に、泣けばいい」
これは、スオウの『痛み』を認めてくれた言葉だと思います。
君は、私とは違う存在だとしても、同じ感覚を持っている。
ひいては、分かち合えるものがある、同じ世界に一緒に生きてる、という意味を含んだ言葉だったのではないかと。
ジュライ君に言った「普通が一番」っていうのも、人間以外の存在を異端視しない未咲さんの姿勢や、当たり前(特別じゃない、皆に共通するもの)が大事ってことを表した台詞なのではないでしょうか。
そんな優しい人との出会いを経て、仲間達と再会したスオウは、彼らに自身の存在を認めてほしがったのです。
死んだ『蘇芳』ではない『スオウ』という自分がここにいることと保障してほしかった。
『蘇芳』の代わりとして生まれた存在だとしても、『スオウ』は己の意思と思いでこの旅を続けてきたわけで。
そんな自分は、もうただのコピーではなく、ちゃんとした一人の人間(非契約者という意味ではなく)だと言ってもらいたかったのだと思います。
自分の個性・独自性を認めてもらう、というのは流石に初対面の未咲さんでは難しいですから。
だから一緒に旅をしてきた仲間にこそ、それを求めた。何より、好きな人には、他の誰でもない自分自身を見てほしかった。
そんな気持ちだったのではないかと思います。
・・・・うーん、どうも今回ごちゃごちゃ理屈をこねたので、もうちょっとわかりやすく表して見ますと。
未咲さんの方針が『オケラだってミミズだって、契約者だってコピーだって、みんなみんな生きているんだ』みたいな感じで。
黒さんの方は『本物の蘇芳じゃなくていい、元々特別なオンリーワン』みたいな(笑)。
どちらも歌詞っぽくなった・・・・何故だろう(笑)。
そういえば、未咲さんにナイフを向ける黒をスオウが必死に止めようとするシーンに、以前の黒とスオウの会話を思い出しました。
人を殺す黒を「(その人の)変わりはいない」と非難した少女は、己が誰かの代わりとして生み出されたと知った。
かつての理屈は必ずしも絶対ではなかったけれど。それでも尚、人が死ぬのは嫌だと今も思う少女の心。
だから、刃を握る黒を止める。あの時と同じように。
そう考えると、胸に来るものがありますね・・・。印象が代わってくる場面です。
これを思い出すまでは、「黒さんは未咲さんにもうちょっと優しくしてやれよ」くらいしか思わなかったシーンでしたが(笑)。
それにしても、未咲さんはいい人だなぁ・・・
ぱっと見、いかにもエリートのデキル女、みたいな感じなのに(実際に優秀ですが)、感覚がすごく普通の人で親しみやすくって。
「何故三号機関に」って、キサマのせいだよ黒ずくめの色男めー! 彼女、オマエに会いたいって先週言ったんだぞー! 真っ先に出た言葉が「捕まえる」、じゃなく「会いたい」だったのにはびっくりしたなぁ。
それなのにこのモテモテ男ときたら、さっきひっぱたいた女を「オレが止める」の一言で笑顔にするとか、どんな魔法使ってるんですかー!?(笑)
そして、葉月には胸が痛みます・・・・
唇に付いた輝子の血、彼の血を吐くような苦しみと決意を表した画なのでしょう。一体誰が、こんな惨いことを仕組んだのか・・・
終わりに近づいているのを感じますが・・・あちこち不吉な要素が多くて不安になりますなぁ・・・極力、死人の出ない方向で終わってほしいものです。
最終回後はスオウとジュライを未咲さんが引き取る展開なんてものを勝手に夢見ていたので、今回はうれしかったですね。いや、伏線とかは何も無いですけど(ジュライと未咲さんには交流がありましたが)、個人的にこの三人すごく和む・・・
スオウが学校から帰るとジュライとペーチャ(中身は流石に足首鑑定士ではないだろうな・・・)が待ってて、未咲さんは相変わらず仕事に慌しくて、久々に連絡がついたと思ったらいきなり子持ちになってる課長に斎藤さんがショックを受けたり(笑)。
そんな結末はどうでしょう(どうと言われても)。
スオウは黒さんと一緒に行きたいだろうけど、彼の生きる世界は苛酷ですし・・・でも、未咲さんでは権力から二人を守るのは厳しいか・・・・
えー、最後に個人的な妄想が混じりましたが、今回はこのへんで終わります。
それではー。
にほんブログ村
DARKER THAN BLACK-流星の双子- (1)(Blu-ray Disc)
DARKER THAN BLACK-流星の双子- (1) [DVD]