DARKER THAN BLACK -流星の双子- _第6話『香りは甘く、心は苦く・・・』感想 / テレビアニメ

一言結論:自分の心の痛みに気を取られ、他者のそれを想像することを忘れてしまって。そのことが新たな傷を生む
ネタバレ有りなので、以下は続きから。
回想でなくちゃんと本人が登場した銀。
彼女への複雑な感情を垣間見せる黒。
そんな二人にスオウはどう絡んでくるのでしょうねー。まだ未熟な故に、辛い思いをすることは避けられない彼女ですが・・・
前回「契約者ってそういうものだし、それにわかりやすいし」的な安易ともとれる理由で仕事を受けたスオウですが、そんな彼女はノリオに非難されることに。
彼が「契約者なら人を殺しても平気なのか?(殺してもいいのか?)」という言葉が否定したのはスオウ自身ではなく、覚悟の足りないその姿勢。
彼女が人命を奪う理由を『契約者』という肩書きに押し付けようとしていることを示していたのかな、と思うのです。
「この人殺し!」なら誤解だし、「契約者なんていなければ・・・」なら自分と異なる存在の拒絶なのですが。しかし彼がスオウに訴えたのは、「人の大切な人を奪っておいて、その程度の覚悟なのか」ということ。
もちろん、ノリオの嘆きは理由がどうのなんてことではなく、母を喪ったことが原因には違いないのですけれど・・・
でも、猫ペーチャの制止を振り切って銀を撃とうとしたスオウに意図せず命中している気がして。
そして、ノリオとスオウの状況は、かつてのスオウと黒の状況を思わせます。
父親を契約者によって奪われ、黒に「契約者って何なんだ」と詰め寄ったはずが、気付けば逆の立場に立っていたスオウ。彼女にしてみれば、母を亡くしたノリオは以前の自分自身。
元は被害者だったとしても、力を得たら加害者にもなりうるのです。
立場が変われば、今までと同じ心構えでは駄目な時があって。スオウにとっては、それが今。
無力な子ども時代と同じ気分でいることは、最早許されない。
自分のことだけ考えれてば良かった時期はもう過ぎ去った。他者の痛みを想像することは、自分で心がけないといけない。それが撃つ者の責務。
それでも撃たねばならない時もきっとあって。そうだとしてもその姿勢は、撃つ相手への礼儀として失ってはならないもの。
それを亡くした時、人は外道に堕ちる、そう思うのです。
ツルを殺すのは嫌がっていたたスオウですが、それは『撃つ』側の感情だったともとれる(意地悪な見方ですが)。
他者を殺傷する行為は、自分にとって嫌なもので、だから避けたかった。『撃たれる』側(当人とその周囲の人間)の恐怖や痛みを想像したから、ではなかった。
だから、誰か(ノリオ)に恨まれた・・・と落ち込んでしまう、と。
予想外の方から責められて驚いたのではないかと。
命中させることにばかり気を取られて、その銃弾がどういう結果を導くのかまでは考えが至っていないんですよねー、多分。
人間、自分が痛みを感じていると、他者の痛みを想像することがすっぽり抜けてしまうというのは「ああ、有るよなー・・・」と思いました。
今回で「力の行使には責任が伴う」という誰もが一度は聞いたことのあるフレーズを、少女は身をもって知ったのでしょうね。
たとえ『順当な理由』を見つけ、それを引っ張ってきて体裁を繕ったとして。
引き金を引いたのは君なんだから、責任は君が負うものなんだよ、という。
この体験・・・というか、自分の負うべき責任を自覚することは、スオウの成長に不可欠な事項。「傷つくのを避けられないタイミング」だったと思うのですが。
でも、はっきり言って今回のスオウの傷は最小限に留められていた感じがするんですよ。
実際のところ、スオウは殺さずに済んだわけで、その手を汚すことは無かった(実はノリオも誤解はしてても憎んではいないし)。
銀を殺すのは黒さんが止めてくれて、ミチルさんには銀が手を下した。
未熟なスオウを前作キャラたちが総出でカバーしてくれているというか。一期キャラは皆良き先輩です(笑)。
だから、先輩ヒロイン銀の今回の行為は彼女自身の意思なのではないかなーと思うのです。強制されて仕方なく、とかではなく。彼女はスオウより先を行っているはず。
前作では自分の意思での行動が少なかった彼女ですけれど、そのへんは色々変わっているようですし、充分有りうると思うのですが・・・
銀は、己の意思で黒さんと別の道を行ったように感じられるんですよねー今のところ。
見えなくても会いにきちゃうんですから、離れたかったわけがない。でも、彼女は己の責任を全うするためにこの状況を受け入れた・・・とか勘繰ってしまいます。
そのへんはともかくとして。
銀に救われてほしいという色眼鏡も含めた希望的観測ポイントがあってですね。それが、スオウの作った折り紙の船に水が溜まっていたところなんです。
これを見て、スオウが彼女を助ける鍵となりうるのかもしれないと感じました。
『覆水盆に返らず』と言いますが、水(銀)は零れる事無く折り紙の器(スオウ)の中に収まっていました。これが、まだ間に合うという暗喩であってほしいなーと。
まあ、これだと黒さんの出番が無いっぽいですが・・・そこは主人公なんだから気張ってどうにかしてくださいよ(投げやり?)。
これで何も出来ないようだと、銀が最愛じゃない(もちろん好きですけど)自分でも怒りますよ。「キサマそれでもアンバーさんが身を捨てて守った男かぁぁ!」と(本命ばればれですね)。
で、話をスオウに戻して、今回己の甘えを残した姿勢を否定された彼女が踏み出す小さな一歩。
「撃つな。オマエには向いてない」「お酒飲まないで」(概略)という交換条件が黒との間に成立してました。
これは、別にスオウは撃ちたがってるわけではないから彼女の責任感を鍛えるって方向ではない。
・・・けれど、それ以前の段階としては有効だと思います。「自分があの行動をすると、こういう結果になる」というのが約束されているわけですから。
まずここを通って、最終的に「もし私がここでこうしたら、おそらくこういうことになる。だからやる(或いはやめる)」というところにたどり着く、現在はその途中。
こういった約束が成立するには、相手との間にある程度の信頼関係が必要なわけですが。でも、名前をちゃんと呼ばれたことで、そのへんは問題ないレベルまで引き上げられた様子。
流石は黒さん、モテモテオーラは消失しても女性の心をつかむテクニックは相変わらずです(笑)。
でも、猫ペーチャが「いわくつきの女」とか何とか言うもんだから、スオウは電柱を蹴るわけです(笑)。
やっと仲間に連帯感を感じるようになったのに、自分だけ知らない『昔の女』の存在が匂ってきて。しかも黒さんは、やけに気にかけている。
まだ恋愛関係には行ってないだろうから、これは仲間意識に水を差された不快感、というところでしょうか。それも大きく括れば『嫉妬』なのでしょうがね。
最後に、謎ばかりの三号機間の唯一の一般人(もしくは常識人)かと思われていた茶髪にメガネの沢崎さんでしたが、彼女もなかなかに食わせ物というか。
まあ未咲さんに忠告してくれる辺り、彼女のことを嫌っていないでしょうし、信じる正義の違いで戦うことはあっても憎悪をぶつけ合うことにはならないと・・・いいなぁ・・・(不安)
あ、コートの未咲さんはたいへんカッコよかったです(笑)。二年前とは深みが倍増してるように感じてなりません。
そんなこんなで今回の感想はこの辺で。
それではー。
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