鉄腕バーディー DECODE:02_第10話『It Never Entered My Mind』感想 /テレビアニメ
一言結論:彼女は間に合わず、彼は己に残ったわずかな可能性を、他でもない自分の手で潰した
以下、ネタバレありです。
前話の壁の血痕について見返してみたんですが、他が巻き戻っていく中、血の付いた部分だけそのままだったように見えました。
どういうことなんだろう、これ。
元は能力使用者であるナタルの体の一部だから影響を受けなかった、というのもちょっと考えたんですが、それだとナタルの服に付いた血も巻き戻らないはずですよね・・・
わかんないー。まあそのへんはもう関係ないのかも。なんかそれどころじゃないです。
でもそんな鬱な展開の前に、場を暖めてくれるカペラ・ティティス。
今期始まって以来のシリアスな素顔(うん、こっちが素なんですよね)を見せてくれますが。
胸に『4-2 ペ』(韓国人?)とか付けて凄まれてもなぁ・・・しかもブルマで。
むしろ笑えるシーンになってますよ。迎えの人が地球の字や文化を知ってたら大恥かいてましたって。
で、ちょっとほろりとするネタをはさみ、最後にオチまでつけて「ちょっと感動しちゃったじゃねえかああ!!」と退場。
か、完璧です。この偉大なギャグキャラを敬礼で見送りたいと思います。(そういえば軍属!)
こうしてギャグ担当が不在となった今、ナタルがいよいよデッドエンドへ一直線。
今回のタセラの死は重い。幼女を惨殺って事実だけではなく、そこに込められた意味も含めるとその重みは倍増します。
これはさすがに取り返しがつかないかもしれない・・・・
タセラは『差別を乗り越え仇も忘れて静かに生きる』というナタルに残された数少ない可能性を体現していた存在。
それを殺してしまったということは。
救いに繋がる細い糸を、自ら断ち切ったということでしょうか。
サブタイトルの『It Never Entered My Mind』もここにかかってくるのですかね。
地球暮らしを気に入っているというタセラの思いは以前明かされていた通り。
ですがその時はちょっと意外に思っていました。
宇宙人(銀河連邦の人々)は、地球も地球人も低く見ていた様子だったからです。
彼らにとって地球人類の文明は『未開』で、肉体能力は『脆弱(アルタ人並)』
アルタ人に対して差別意識を持っていれば同様に軽んじられてしまう。
実際、地球をリュンカの実験場にしようと考える奴まで連邦の中枢にはいたようですし。
そんな低い立場の地球人として生きることは、今度は自分が見下される側になるということ。
気持ちの問題だけでなく、生活水準も下がる以上その他の点においても好ましくないはず。
それを補って余りあるほど、自分を引き取ってくれた夫婦がタセラにとって大切になっていたのでしょうね。
4話でも彼らはタセラについていてくれたようですし。
でも地球人のふりをするということは、優しいこの夫婦をだますことでもあるのですが。それも覚悟を決めたうえで。
兄を惨殺されたタセラ。でもナタルと違い、その悲しみを怒りに変え復讐鬼と化すことはなかった。
やり場のない心の痛みを自分では処理できず、憎しみへすりかえて他者にぶつけることはしなかった。
それは自分が殺されることに怯えていたからだけではなく、義理の両親が悲しみをしっかりと受け止めてくれたからなのではないでしょうか。
バーディーを犯人と決めてかかっていた他の逃亡犯たちの中にあって、身内を殺されているのにまともな判断ができていたことを不思議に思っていたんですが。
そう考えれば納得できるような。
そうすると、父を殺され人々との絆が絶たれたナタルは酷ですな。
それも彼をヴァリックと同じ行動に走ってしまった理由の一つなのでしょう。
今回冒頭のシーンによれば、実父から虐待されて育ったヴァリックは、自分自身が受けた痛みを自分より力の弱いナタルにぶつけていた。
そうすることで己の憎しみを発散していたのだと思います。
現在のナタルの行いは、この時の彼と全く同じ。
わざわざ恐怖を与えて、その場では何もしないところまで。(回想のヴァリックも本気ならナタルを殺せたはず)
でもナタルを助けた室戸さんは違うタイプの人間でした。
彼は父親から受けた恩をその息子に返した。
過去を元により良い未来がつむがれる。復讐とは真逆の繋がり。
ナタルが真に報いるべきだったのは、命の恩人にして育ての親のダスクさんへの恩だったはず。
それでも最早残されているのが復讐だけとなったナタルは、そんな室戸さんの元を飛び出してしまいます。
人間は、常に『正しい』選択をできるとは限らない。
でも己の行いが間違っていたとわかったのなら、それを改めることは出来る。
もしナタルがタセラのように生き方を変えることができたとしたら。
受けた差別への怒りを乗り越えて、仇への憎悪を捨てて、翔子ちゃんや周りの人々に自分の真実を偽ることになったとしても。
それでも静かに生きると決めることができたら。
すでに間違った道を選んでしまったけれど、わずかでもマシなことになっていたのではないか。
自分の『責任』からは目を逸らしたままだったタセラの元にナタルが現れたように、きっと追っ手は来た。
それでも、バーディーとこんな形で向き合うことにはならずにすんだかもしれない。
ナタルも自分が破滅への道を進んでいるのはもうわかっているのでしょう。
だが選ぶべきだった『正しい』道を捨て、残っていた細い『救い』の道は自分で断ち切った。
だから彼はもう覚悟を決めて、突き進むことにしたのでしょうね。
守りたかった女の子を悲しませることになっても。
でもきっと心は痛い。
頬をつたう赤い涙は、その表れではないかと思います。
そして、主人公バーディーを襲う苦悩。
独りになれるというか、彼女がつとむ君と二人きりになれる屋上という場所は前作からしばしば登場しました。
今回の屋上でのシーン、連続殺人とナタルの関与を疑うつとむ君とそれを否定するバーディー。
かつて中杉さんにリュンカが憑いていることをつとむ君に言い出せず、悩んでいた時のことを思い出します。
あの時中杉さんのおじいさんが殺されて彼女の家に入れなかったつとむ君は、隣の建物の屋上で中杉さんのために何かしようと必死で。
バーディーは彼女がリュンカごと処理されることを知り、心を痛めつつも自分の『責任』を果たそうとしていた。
今度も、ファロイドの死んだ場所でナタルとの思い出の品を見つけて、彼女の中ですでに答えは出ていたのでしょう。
ただ、それが誤解であってほしい、という願いまでは消しきれなかった。
疑っていたのは事実、でもナタルを信じたかったのも同じように事実。
だからナタルの所業にショックを受けても心底からは驚かず、かといって彼を捕まえることもできなかった。
「なんで逮捕しなかったの! 連邦捜査官でしょ!!」と自分自身へ叫ぶことしかできなかった。
その一方、モスとガトールが手に入れたのは核?
クライマックス、やはり彼らも大人しくしているつもりはない様子。
つーか首が千切れてましたよ。今回はさながら残虐描写の総集編。タセラを直に映さない分、そこで補充?
今までのナタルの行いを再確認すると、もう彼は諦めざるをえないかと余計思えてしまいます。
だれかのフォローが欲しいところ。室戸さんだけじゃ弱いんで、翔子ちゃんとか。
でももう誰のフォローでも救えないところまで来てしまった気も・・・・
次週を見るのが怖いですよ。
まあ、これ以上落ちようがないって思えば・・・
そういえば、増援ってのは誰が来るんだろ? またネーチュラー? でもこの件、あの人の担当じゃなさそうだけどな・・・
そんな感じで不安がいっぱいですが、次回を待つことにして。
それではー。