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宇宙をかける少女_ss『キミにお願い』(Itsuki side) / テレビアニメ

    


 昨日の続き、今回はいつきからほのかへ。
 この二人、思いつめてしまうところがちょっと似ていると思いました。ほんとはこの時期、双方もっと不信感を抱いていた気もしますが・・・まあ、その似ているところを察したということにしてください。
 書いてて口調がえらい難しかったことをよく覚えています。

 ちなみに、タイミングは秋葉編と同時。これは、ほのか編も同じです。
 イモちゃんがいないのは、高嶺さんを電車でお迎えに行ってるから・・・というつもりでいます。
 矛盾があってもスルーでお願いします。

 では、続きから。



 月面での戦いは、どうにか乗り切ることができました。
 獅子堂さんのご姉妹の、人間離れした能力抜きではこうはいかなかったでしょう。
 アレイダという謎の人物はともかく、彼女達も只者ではありません。
 そんな彼女らについつい目を奪われがちになるのですが、気になる人物は身近にもいます。
 それが、口論している獅子堂さんとレオパルドさん(彼がいることからもわかる通り、ここはレオパルド・ルームです)を少し離れた場所から静かに眺めている彼女――河合ほのかさんです。

 口数が少なく感情もあまり表さない彼女ですが、明らかに何かを知っています。そして、そのことを隠しています。
 それを探り出すのが、私の役目です。ICPの職務としても、神凪いつき個人としても、そうすべきです。
 それは、わかっています。けれど自分は、そうしませんでした。
 試みてみたことはあるのですが、それは全力でとは・・・・あらゆる手段を用いてとは言い難いです。
 言い訳かもしれませんが、力づくでは彼女に口を割らせることはできない。そんな気がしました。
 彼女――同年代としては幼い容姿のほのかさんを見ていると、思い出すのです。
 ニーナやウルと出会う前の未熟な自分――不安を隠し強がってばかりいた、意地っ張りな子どものことを。



キミにお願い(Itsuki side)



 テラ・アブダクションで両親とはぐれ、独り取り残されて。
 私も最初は、大人に助けを求めました。
 けれど件の事件は公になっておらず、知る者はほとんどいませんでした。
 私の望みが叶うような状況ではなかったのです。
 話を信じてくれる人間がいないことを悟った私は、自分の手で両親を探し出すのだと決意しました。
 誰の力も借りるものか。自分独りで成し遂げてみせる。
 そう誓いをたてました。そのことは、今でもはっきりと覚えています。
 その頃鏡に向かうと、そこには眉間に皺を寄せた怒ったような顔がありました。
 おそらく、ずいぶん可愛げのない子どもだったと思います。
 ですが、当時はそんなことに気を配る余裕は無く――というか、そんなものはどうでもいいと思っていました。
 他人にどう思われようと、構うつもりはなかったのです。
 ただそれは、追い詰められて必死に強がっていただけでした。
 けれど、幼い私にその自覚はありませんでした。思い返すと、恥ずかしくてたまりません。
 狭い視点でしか物を見ることができず、勝手に思いつめ、周囲を警戒してばかり。
 ニーナやウルに出会えなければ、私は今でもそうだったのかもしれません。二人には、本当に感謝しています。

 ・・・いけません。ほのかさんの話でした。

 河合ほのかさん。EX-QTを持ち、レオパルドさんのこと等いろいろな事情に詳しいらしい彼女ですが、私にはどこか危うく見えて仕方ないのです。
 それは彼女を見ていると、ある顔が思い出されてならないからなのでしょう。
 鏡の向こうから、こちらをじっと睨んでいた幼い顔。昔の、私。
 もっとも彼女の場合、感情をあまり表に出さないということもあって、あの頃の私ほど険のある感じになってはいないのですが。
 それでもほのかさんの、どこか人と距離を置きたがる姿勢。
 抱えている事情の多くを、協力者であるはずの秋葉さんにすら話そうとしない。
 ICPに所属している――市民を守る立場の人間である私の介入も、歓迎されていないのは明らかです。

 その姿勢には、覚えがあります。私も、そうでしたから。
 任務のために、私は彼女の知っていることを聞き出さねばなりません。
 けれど、もしこの感覚が正しければ――ほのかさんが、かつての私と同じであるなら――その達成は力づく等の強引な手段では叶わないでしょう。
 一度手合わせしてみてわかりました。彼女の決意は、固いものです。私の決意と同じように。
 だからまずは、彼女と親しくなろうと思います。
 正直に言います。それは、任務のためではありません。これは、神凪いつき個人としての感情です。
 放っておけないのです。かつての自分と同じような彼女を。
 力になりたいのです。昔も今も、私を支えてくれるニーナやウルのように。

 自分の未熟はわかっています。今の私では、二人のようにほのかさんの力になれるかどうかはわかりません。彼女の心を開くことも、できないかもしれません。
 それでも、何もしないなんてできません。それは、見捨てるのと同じことです。ニーナ達に救われた、私にとっては。
 では具体的に何か案が有るのかと言えば、そういったものは特にないのですが。
 そうですね、ニーナが私にしてくれたように・・・・・・・・・・やはり、やめておきましょう。・・・私は私のやり方でいくのがいいはずです。ええ・・・・・

 となると、やはりアレですね。
 獅子堂さんには断られてしまいましたが・・・いえ、その雪辱という意味でも、このやり方で行きましょう。
 まず、どう切り出したものでしょうか。

「おい、いつき! ・・・何をボーっとしている? 気をつけろよ、ケアフリィ」

 気がつくと、ウルがこちらを見ています。
 いけません、つい考えるのに夢中になってしまいました。
 ICPの任務を忘れるわけにはいきません。個人の事情で行動を制限している分、できることはきっちりしなくては。
 話すつもりの無い様子のほのかさんに強引に口を割らせるのは辞めるとしても、獅子堂さんのお姉さん達なら説明してくださるかもしれません。
 というか、この様子では実の妹である獅子堂さんが問い詰めるのではないでしょうか。
 彼女達はまだ来ていませんが、しばらくすれば来るはず。その時に、話を聞かせてもらうことにして。
 今は、ここにいる妹さんの方に聞き込みといきましょう。
 ほのかさんへのお願いは、そのあとです。


 ――私と、交換日記をしてください!




終わり




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