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スパイダーライダーズ_SS『キミの瞳はソラの色』 1 / テレビアニメ

 

 やっと書きあがった『スパイダーライダーズ』ss。
 全6話と予想以上に長くなってしまいました。一日一話ずつ更新予定です。

 舞台は『よみがえる太陽』の最終回後なのでネタバレが含まれます。
 ので、続きから。




「それじゃあ頼むなー」
 異世界への移動だというのに、目の前のハンターはいつもの笑顔を浮かべている。
 もっともその異世界――地上は、この少年の故郷だ。
 かつて、敵対するインセクターの国へ話し合いに行こうと大胆にも言い出した、のみならずそれを実行した彼である。
 この緊張感の無さはむしろ当然なのかもしれない。けれど・・・ 
 コロナは胸中に不安を感じつつも、それを口に出すことはしなかった。
 言ったところで彼は決断を変えはしないだろうとわかっていたし、帰る故郷がある人間を引き止めるのは憚られた。
 だから引き止めるようなことは言わず、素直に見送ろうと決めたのだ。
 「また会えるよね?」と尋ねた時の彼の答えは「あったりまえだろ」だったから。
 たとえ、その後に続いていたのが「オレたち仲間じゃないか」というやや不本意な言葉ではあったとしても。
 でも、これが今生の別れではないというのなら。
「元気でね、ハンター」
 ややぎこちなくなってしまったが、どうにか笑顔を作ることはうまくいった。
 しばらくは会えないのだ、女の子としては笑った顔を覚えていてほしい。
「もっちろん! じいちゃんに元気な顔見せなきゃだし、元気がなきゃ冒険できないしな!」
 なんとも『らしい』返事・・・・・・・・えぇ冒険?
 「ちょっと待って、地上に帰るのっておじいさんのお墓参りの為だよね?」と聴く暇さえなく。
 コロナの前に溢れる眩しい光。そして感じる、どこか懐かしい精霊オラクルの気配。
 思わず瞑った両目を開けた時、さっきまで目の前にいたハンターの姿は既に消えていた。
 神殿の床にぽつんと、マナクルだけが残っている。
「え・・・・・」
 伸ばした手もそのままに、コロナは呆然と固まる。
「まったく、墓参りのついでにまで冒険とは・・・・。本当にあいつというやつは・・・・・」
「シャドウ! あなたそのことを知っていたのですか!?」
 後ろからの呆れたようなシャドウの声。それに反応したのは、硬直した少女の気持ちを誰より理解しているパートナー・ビーナスだった。
「そのこと・・・・とは冒険のことか? そんなことを言っていたのだが・・・皆も聴いて・・・・」
「いませんっ!!」
 一刀両断。
 雲行きが怪しくなったことを察したようでどもりがちになっていくシャドウの言葉を、ビーナスの怒声が断ち切る。
 精霊オラクルの力を借りてハンターを地上へと送ったアクーネは戸惑いをその顔に浮かべ、マグマが「おいおい・・・」と肩を落とし、イグナスが溜め息をつき、ルメン王子はやれやれと肩をすくめ、スパークル姫はきょとんと瞳を瞬かせ、四天虫代表で参加したグラスホップがオタオタと駆け回り、残る5体のスパイダーたちは顔を見合わせる。
 そしてコロナは・・・・
「ええぇぇぇぇ!?」
 大空へ向かって、叫ぶしかなかった。

 「大丈夫だコロナ、あいつはすぐに帰ってくるさ」と皆に口々なだめられ、コロナは不承不承納得した。(それに実際どうすることもできないのだ)
 彼のいない間に、とびきりきれいになって、それで料理の腕も上げて、びっくりさせてやる! そう思うことにして、受け入れた。
 再会した時に返すため預かったマナクルを握り締め、強く決意を固めて。
 ところが。

 それから実に3年の月日が流れた現在もまだ、ハンター・スティールの行方はようとして知れない。

 

キミの瞳はソラの色

 

 目を覚ますと、カーテンを透かして太陽の光が差し込んでいる。
 ベッドから起き上がり、窓を開けると晴れ渡った緑色の空がどこまでも広がっている。
「いい天気ー」
 久しぶりの故郷ののどかな風景に、コロナは笑みを零した。

 インセクターとの戦いが終わっても、全てが片付くわけではない。
 最初の数回はハンターの冒険についていっていたコロナだったが、その途上で見た人々の様子に思うところがあって復興の手伝いをすることになった。
 具体的には、人間とインセクターの交流の橋渡し。人間の世界で暮らすことを決めたインセクターたちの支援だった。

 太陽を取り戻した昆虫帝国改め、昆虫共和国。
 確かに作物を育てるのに適した気候にはなった。しかし、そうした環境の変化に対応した農業形態を構築するのは簡単なことではない。
 人間より進んだ技術力を持つインセクターといえど、幾年かの試行錯誤はどうしても必要になってくる。
 「それを人間が手伝えばさー、二つの種族の友好も深まっていいんじゃないかなー」というルメン王子の提案をインセクター側の代表となったバグースが受け入れ、両種族の交流が正式に始まった。
 インセクターたちは主に人間の農耕技術を、代わりに人間はインセクター側の発展した科学・工業を学ぶ。
 互いの国をつなぐ道の建設が各所で始まり、両種族間の商業にも着手された。

 だが、もちろん問題はあった。
 インセクターへの恐怖や不信が人々には根深い。特に、住民が少なく国からの警備の兵も少数だった田舎――農村部ではそれが強く残っている場所も多い。
 そうしたインセクターが溶け込むのに困難なところへ出向くのが、コロナの仕事だった。
 スパイダーライダーがいることで安心感を住人に持たせ、インセクターが村に住めるようにするのだ。
 しばらくして住人たちが「インセクターは危険な存在でない」と納得するまでコロナはそこに駐留し、それが完了すれば次の場所へ向かう。
 コロナはそのため、方々の村や町を回っていた。ビーナスと、ハンター不在の今ではシャドウも行動を共にしている。

 一方で、人間はもはや敵ではないとインセクターの側にも広く知らせることも必要だった。
 そこでインセクターの集落の方では、マグマが同じことを行っている。インセクターの支配圏内は未知の領域であったため、これは彼にとって格好の冒険というわけだ。
 共和国の中心都市には現在でもアクーネがいて、人間の国との共存を訴える役目を務めていた。
 人間でありながら太陽の光を与えてくれていた彼女の立場は、インセクターの中でも決して低くない。彼女の力添えもあって、マグマの行動にも結果が現れきている。
 報告や意見交換のため、ブルータスとポーシャもときどき会うことができる。この采配も、きっとあの頭のいい王子が考えたのだろう。

 イグナスは変わらずアラクナ王国の騎士として働いている。
 だが今までの騎士団長の役目はグレイに譲り、現在では人間とインセクター双方の隊員による混成部隊の隊長を勤めていた。
 苦労の甲斐あって、だんだんと形になってきたようだ。
 スパークル姫も変わらない。家族を連れてアラクナ王国に引っ越してきたグラスホップとはやはり仲良しだ。
 そんな自分たちの姿を通し人々に(自身にその自覚はあまりないのだろうが)二つの種族の共存が決して夢物語ではないと示していた。
 それだけでなく、成長した彼女は王子を手伝って国政にも参加するようになってきていた。
 妹の顔が仕事中いつでも見られるということで、あのルメン王子の政務がはかどるようになったと評判である。

 戦いは終わったが、スパイダーライダーたちはそれぞれの務めを全うしている。
 かつての強敵、四天虫のビーレインとスタッグスも現在ではバグースの補佐として尽力していた。
 今は亡き勇者ブレイドもきっと天国から見守っているのだろう。

 もちろんハンターだって、地上に帰るまでは復興の手伝いはしていた。
 彼の場合、それはやはり冒険という形。
 未開の地域の調査というのは、さまざまな分野にとって重要なことだ。
 鉱物などの資源、豊かな土や水のある開墾に適した土地などが見つかることもあれば、貴重な遺跡など文化的な発見をもたらすこともある。
 それにはきちんとした報告――いわゆる公的文書というもの――が必要になる。
 冒険が終わると必ず会いに行くコロナは「毎回この報告書がイヤなんだよなー」とぼやくハンターをなだめたり、冒険の土産話や自分の近況等を語りあったり、ハンターが書くはずの書類をこっそり手伝ったり(もっとも王子にはお見通しだった気もするが)。
 そうしてときどき他愛もないおしゃべりをしたり、みんなで遊びに行ったり。
 ハンターの鈍感さが改善されることをコロナは会うたびごとに期待していたが、叶わず毎回落胆を繰り返す。
 そんな生活が2年ばかり。
 そして、祖父の命日が近いことを知ったハンターが「墓参りに地上へ行きたい」と言い出したあの時より、更に3年ほどが過ぎた。

 国のあちこちを回っていたコロナにとって久々の帰郷。長い髪を揺らすアラージャ村の風の感触さえ懐かしく感じる。
 ハンターがいたかつては、頭の上で縛っていた髪。それを解いたままにするようになってから結構経つ。
 時は確かに流れている。
 今のコロナは18歳になっていた。



続く



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