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宇宙をかける少女_まとめ感想3 / テレビアニメ

    


一言結論:『理解』が無くても『信頼』があれば


 『宇宙をかける少女』は自分には向いてないと結論付ける秋葉、姉妹たちと和解できなかったナミ、強硬な姿勢の風音さん等はこういうテーマを描くためにそうした位置におかれていたのではないか、と語っている『そらかけ』まとめ感想のその3です。
 最終回を見た後でこの作品のテーマをわたしなりに考えてみたものなので、通常の感想に比べて自己流の解釈が多めになっています。
 
 項目は、全部で4つ。
 ですがまたしても長くなりすぎたので、今回は前半の2つのみお送りします。
 後半も、もうほとんど出来あがっているので明日にでもあげたいなーと。
 見出しはこちらです。


1.わかりあえなくても嘆くことはない
2.反転姉妹
3.神楽とネルヴァルの役割(次回)
4.たのしい『そらかけ』(次回)


 ネタバレありなので、以下は続きから。



1.わかりあえなくても嘆くことはない

 秋葉とレオパルドとの出会いから始まった『宇宙をかける少女』という物語。
 前情報がほとんど無い状態で第1話を見ての感想は「人間と機械っていう、異種族が交流していく話なのかな?」というものでした。
 異種族同士が出会い、誤解による衝突等の問題を乗り越え友情を築くタイプなのではないかと思ったのです。
 それどころか『アイドルマスター XENOGLOSSIA』という前例もある以上、たとえ美少女と機械でも恋愛関係に発展してもおかしくないかも・・・
 我侭で引き篭もりのレオパルドだけど、秋葉の影響で人間を理解していくのだろう。目的のない秋葉も、レオパルドと接するうちに自分のやりたいことを見つけて成長していくのではないか・・・
 きっと「たとえ種族が違っても、わかりあえる」――そんな結論に落ち着くんじゃないかな・・・うん、王道だ、と予想していたのですが甘かった。人間関係は各所でこじれたまま終幕・・・ってええええぇぇぇ!?
 ですが「たとえ種族が同じでも、人間はこんなにもわかりあえない」ということを表現するためだとすれば、この結末はすごく筋が通っていると思い直しました。

 世界設定もそれを引き立たせるために作られていたと思います。
 宇宙で暮らすほどの技術を持ちながら、QTという思いを力に変える術を持ちながら、ナビ人という異種族と共存しながら、人間同士が理解しあうには程遠い。
 気に入らない同僚のブログを炎上させる者、人間に敵対したAIの軍門に下る者、警察機構に所属しながら部下の暗殺を企てる者、他国(コロニー)の危機に自らの勢力拡大を画策する者。
 人間の本質は現代と変わらず、自分勝手なまま。他者を省みることなく、己の都合を押し付けあっては破綻する人間関係がそこかしこに。

 この理解し得ないという現象は、立場の違いによってのみ引き起こされているわけではなく。
 近しい人々たち、本来なら仲間である人間同士の間にも容赦なく存在していました。
 わかりやすいのが獅子堂家。外せないのが獅子堂家。もう何といっても獅子堂家(くどい)。
 使命を押し付ける長女に反発する三女。三女ばかりが構われる現状に怒り、敵に寝返る四女。四女の説得にものの見事に失敗する始祖。
 コミュニケーションに失敗した例が選り取り見取りです。

 しかもその際、見ている側が抱く感情が「これじゃあ、上手くいかないのもムリ無いか・・・」ではなく「待て待て、その対応はマズイだろ・・・」だという。
 すれ違いが避けようも無ければまだ納得できるのに、全くそんなことはなく、単に下手をうっただけ。
 これがどうにももどかしく。でもすごくリアルだと思うのです。
 現実の人間関係がうまくいかない理由も、大半は些細あるいは下らない行き違いだったりします。
 避けられない戦いしょうもないいざこざ、っていうのは残念ながらどうしようもない事実(笑)
 この一家が結局わかりあえずに終わってしまうのも、仕方なかったのかもしれません。

 物語をスタートさせた出会いの主、秋葉とレオパルドもまた然り。この両者の理解もちっとも深まりません。
 第一印象は悪かったけれど、だんだんと互いを理解していき熱い友情が・・・なんてことは結局なかった感じです。
 最終回終了の時点でも、レオパルドは変わらず「最低」(ラスボス公認)。まあそこまでが、秋葉が「どこまでも行けそうな気がする」と言っても疑問符を浮かべるばかりだし、イモちゃんの死を喜びさえする様子でしたからね。
 おそらく秋葉も昔のこと等レオパルドについて詳細は知らないままだったのではないでしょうか(ごめんね?」で済ませようとする神楽さんが、懇切丁寧に説明してくれたとは思えん・・・)。
 パートナーのはずなのに「互いを誰より理解していた」なんて間違っても言えない二人だったと思います。

 じゃあつまり、この『そらかけ』は「人間同士はわかりあえない」そんな厳しい現実を描いた作品なのか? 夢も希望も無い話なのか?
 と言いたくなりますが、そう決め付けるのはきっと誤解。
 それを示してくれたのが、最終回の秋葉。
「レオパルドは威張っててヘタレでどうしようもないヤツだけど、こんなことしない!」
 理解なんて出来てないけど、秋葉はレオパルドを信じていた。信じるに足るあいてだと、認めていた。
 わかりあえないからといって、人間関係が築けないなんてことはない。信じる気持ちがあれば、充分始めていけるんですね。
 だからほんの一瞬、秋葉はレオパルドと会うことができて、彼を救うことが出来たのだと思います。
 「オマエの言ってることは全くワカラナイ!」のつつじさんとベンケイの名コンビぶりも同じ原理に根ざしているのでしょう。
 プリンス・オブ・ダークネスを倒せたのも「あのような言い方をすれば大喜びで撃ってくることはわかっていた」というネルヴァルのレオパルドへのある種の信頼(むしろ悪い意味で?)があってこそ。

 この作品は非常な現実と同時に希望も描いてくれていたと思います。
 ただそれはあくまでも一筋の光で、万能薬などではない。現実の厳しさは揺るがない。
 姉妹たちとの和解に至らなかったナミの姿に、そのことを痛感させられます(彼女については詳しくは次項で)。
 ですが、つつじさんに拾われた彼女にもまた小さな希望は残されていたようです。
 ・・・・でも、ネルヴァルがナミを見捨てた原因の一つってつつじ女帝陛下のご演説じゃなかったっけ・・・。ネルヴァルそれで人間の理解諦めたような・・・

 それから、秋葉ががんばった部分をもうひとつ。彼女は最後にはお姉さんとちゃんと協力できました。
 秋葉からすれば勝手な言い分を押し付けてきた風音さん。ナミと違って、彼女との関係を壊さずに済んだのは良かったです。
 これは秋葉が己の役割を受け入れたからで。つまりは、秋葉が折れたんですよね。
 「何て勝手なの。どいつもこいつも・・・」とナミも言っていますが、人間はみんな身勝手。自分の主張を押し通そうとする者ばかり。
 みんなで理解しあって、全員の意見の中から最も正しいものを選び出すなど無理な話。
 場合によっては折れるのが、協調性というものなのでしょう。まあ、どうしても譲れないものは別にして。

 最後の最後に決めてくれた秋葉は主人公として胸を張っていいよ、うん。まあ、正直成長するのすっごく遅かったけど・・・でもキミにしてはがんばったさ!(微妙に上から目線)
 いやー「人間同士は理解しあえる」って結論だと思ってたから、前話のラストでどうするのかと思いましたけど(特にナミ)こういう方向でまとめてくるとは・・・
 正直あれだけ盛り上げたんだから、秋葉とナミの対決は見たかったですけど・・・一話分の時間じゃあ終わらないか。あれだけこじれちゃなぁ・・・


2.反転姉妹

 間違えてしまったとはいえ、力ずくでねじ伏せられたあまりに不憫な14歳・獅子堂ナミ。
 でも「人間同士はわかりあえない」ということを描くためには、彼女をこの結末に導くしかなかったのだと思います。
 ・・・どうしようもない貧乏くじには変わりないので、同情の念がより深くなる気もしますが。
 ともかく、そんな超重要キャラクターの彼女を振り返ってみます。

 物語の出発点、第1話。秋葉とナミは同じ場所にいました。
 仲良し姉妹とはいかないけれど、二人は一つ屋根の下で暮らしていた肉親同士。
 一番近くにいた姉妹の関係がこじれて歪んで溝ができ、それが限界まで広がって崩壊する。人と人が如何に分かり合えないかを示すのには、これほどの例はないかと。
 そういえば第1話にはこんな場面がありました。
 風音さんに家の都合を押し付けられた秋葉は、イモちゃん連れて一目散。それが原因となって外へ出されたナミは、酷く傷つく。
 このあたり、まさに本編全体の縮図だったんですね。もしかするとナミの運命は、この時から決まっていたのかもしれません。

 ナミは、主人公・秋葉の対極に位置するキャラクターだったのだと思います。そういう面からすれば、ネルヴァルより最後の敵に相応しかった。
 常に秋葉の味方であるイモちゃんとは真逆ですね。
 24話で、イモちゃんナミがと互いに意見をぶつけ合ったシーンがありました。終盤までネルヴァル側だったナミですが、この後彼に見放された彼女は独りで突っ走ることになります。
 ここでイモちゃんと物別れに終わったことが、彼女の結末を決定したんですかねー。
 そういえば「イモちゃんイモちゃん」言う秋葉に苛立ちを露にしていたナミは、秋葉とイモちゃんが死に別れかけたことを知らないんですよね。
 ちょうどその頃、彼女は高嶺さんに喧嘩売って気絶してました。すれ違う原因がここにも・・・

 イモちゃんとの話はこのくらいにして、ここからが本番。
 秋葉とナミの違いについて一つずつ見ていきます

 まず、自分の弱さを認められるか否か。
 最終回のエピローグでイモちゃんに己の不甲斐なさを謝っていたように、秋葉は自分の弱い部分・ダメな点を認めることができる子です。
 秋葉と並みの根本的な違いはここだったように思います。
 姉妹たちに劣等感を抱いていましたが、秋葉がナミほど屈折してなかったのもこれのおかげでしょう。

 逆に他者をどうにか見下して上位に立とうとするナミは、自身の弱さを認めない。
 凄い相手は、相対的に己の価値を下げるだけ。それ故、他者は自分より劣った存在でなければならない。それが彼女の論理。
 そんな気持ちの人間に仲間ができるわけもなく、彼女は孤独になっていくしかない。
 秋葉はというと、劣等感を抱かせる姉妹たちも基本的に好きっぽい様子で。強い味方は大歓迎(笑)。
 こうして、友人はじめどんどん味方を得ていった秋葉に対し、ナミは話が進むほど孤立していく。
 ラストの二人の精神面についても、他者の意見も汲めるよう成長していった秋葉に他者を全て拒絶したナミと対照的です。

 そして、自分で考えて決断できるかどうか。最終回の感想でも触れていたあたりです。
 第1話ではイモちゃんと一緒に嫌なことから逃げ出していた秋葉ですが、
「イモちゃん・・・全部終わったら、必ず迎えに行ってあげる。ごめんねレオパルド・・・でも乗り越えさせて!」
 最終回でこう言えるまでになっていたのが感慨深い。
 皆のために自分の一番の望みを後回しにし、レオパルドを殺したくないという本心も押しこめる。その決断は、他でもない自らの意思によるもの。
 この子もちゃんと成長しているんだなぁ、と。伸びてくるの遅かったけどさ・・・(2回目)

 でも彼女の成長はきっと、いつき・ほのか・イモちゃんという友人達のおかげ。いつきとほのかが支え、イモちゃんが彼女の成長を促したのだと思います。
 ナミにも傍に誰かがいたらきっと変わっていたのでしょうけど・・・やっぱり他人を見下す自身の姿勢がナミの結末には大きく影響したのではないかと思います。

 決断の方に話を戻しまして「あなたは、いつも誰かに依存してるのよ。ナミ」と神楽さんに言われてしまった四女の行動はと言えば。
 行動は感情の赴くまま。自身を誘った神楽さんに怒りをぶつけるばかりで、己の責任は全く省みない。
 物語開始当初は、秋葉もかなり無責任な感じだったんですけどねー。両者の行動はいつしか違うものになっていた、と。
 ナミがネルヴァルから独立を果たしたのも、姉達に『宇宙をかける少女』という役目を押し付けられていた秋葉が戦う決意を固めたのも同じ25話。
 両者の歩みに速い遅いはなく、ただ進む方向が正反対だっただけなのでしょう。

 物語のテーマもあって、わかりあえなかった三女と四女。
 神楽さんの言葉に納得していない様子のナミ(さもありなん・・・)は、これからどうするのでしょうね。
 秋葉に最も近い存在で、年齢的にも適当(桜は幼すぎてナミの代わりは無理だろう)だったことから、こんなことになってしまった彼女。
 壊れた彼女と姉妹たちとの関係を再生まで持っていく話が・・・あるといいなぁ。二期でもOVAでもいいから・・・。

 そういえば、元々批判的だった割にやけに秋葉を持ち上げてますが。
 実は、わたしが一番好きなのは神楽さんだったりします。最終回冒頭で転びました。
 秋葉にもナミにも悪いですが、不敵なうえ茶目っ気たっぷりの彼女はかっこよすぎる・・・。


 さて、今回はここで終わり。
 続きは明日に日付が変わって以降なるべく早く載せる予定です。
 それではー。


SORA KAKE GIRL

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