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『スパイダーライダーズ 〜よみがえる太陽〜』 最終話は、泣かさない感動作品

 

 以前に取りあげた『スパイダーライダーズ』の最終回が、もうすごく良かったのですよ。
 涙を伴わず、ストレートに心を揺さぶられました。この感覚は暫くぶりです(泣ける話には弱いので目を潤ませるくらいなら結構するんですが)。
 泣かさずに人を感動させるって、すごいと思います。とっても。

 私ってばエピローグがどうなるかに気を取られて、クライマックスの重要性を忘れていました。
 終局が素晴らしければ、余韻は最小限でいいんですな。
 最終話予告の「最後は大団円!」には、うんわかってるよーって思ってたんですが、もうそれ以上でした。
 ネタバレを防ぎつつ少々具体的に話しますと、私の想像を超えた決着をみたのです。
 といっても、安易な意外性を狙ったバッドエンドではなく。
 かといって、ありきたりのハッピーエンドでもないのですよ。

 一筋縄ではいかないテーマを扱う場合、それをきちんと描くためにはどうするか。
 作品の対象視聴者の年齢層を引き上げるというのもそのひとつ。大人向きの作品なら、届けられる幅は確実に増します。
 ですがこの作品は、低年齢向けという姿勢を崩さず、難しいテーマを伝えてみせてくれました。
 少年向けヒーローものらしからぬ決着ながら、主人公は立派にヒーロー、子どもたちに見てほしいと思える作品だったと思います。

 恒例の一言結論もややネタバレな感じなので、以下は続きから。



一言結論:世界を守るために拳を振るうより、困っている人に手を差し伸べる。それが勇者!


「泣き言、言っていい?」
「あーあ、勇者になんてなるんじゃなかった」

 最終話の開始台詞がこれ。
 そんな我らが主人公ハンターが辿りついた場所が、

「だからお前を守る」
「こまってるんだろ? だったら俺に言えよ」

 この台詞。
 ヒロインに向けたものだと普通は思うのでしょうが。
 彼は、それをラスボスへ投げかけた。

 局面は、最後の敵を遂に追い詰めた、まさにその時。
 普通なら「行けー!」となるところですが、見ていて不思議と乗ることができない。
 どうしてだろう、と思っているところでアクーネが示すその答え。
「力に飲み込まれてしまっては、マンティッドと変わらない」
 仲間たちの力を結集してパワーアップを果たし、やっと反撃に出られた。
 このヒーローものの最もおいしいところ、一番の盛り上げどころで「それじゃダメなんだよ」と待ったをかけてきたのです。

 「戦いはよくない」という信念の主人公は別作品にもいます。
 でも彼らは、交戦によって泥沼の状況や殲滅戦になるのを避けようとしている場合がほとんど。(まあ主人公側が優位な状況って少ない――それだとあっさり敵に勝って話が終わっちゃう――というのもありますが)
 苦労を重ねてようやくこぎつけた優位な立場。そこで「力に頼った解決は駄目だ」と刀を収めることがどれだけ難しいか。
 武力による解決を本当に否定するのであれば必要なのに、この点を見落としていた自分に気付かされましたよ。
 殴られてもやり返さない、それだけが『戦わない勇気』じゃないんですね。
 
 いやー、この決着は凄い。
 私、マンティッドとシンクロしちゃいましたよ。これが勇者か・・・」って一緒に思いました。
 なんというハンターのかっこよさ。彼を評するには『勇者』が最も相応しいです。
 「目指せ『勇者』なんて、王道ではあるがちょっと恥ずかしいヤツだ」とか正直思っていた私は、子どもじゃないにしろつまらない大人でしたよ、ほんと。

 そんなハンターの良さをしっかり理解していたコロナもえらいです。さすがヒロイン。
 苦しいときでも笑ってあきらめないハンターをずっと見てきたからこそ、彼が戦いの鬼になろうとしていることに気付く。
 「笑ってよ、ハンター・・・」とか健気だ・・・。
 まあ・・・
「笑って戦うのが、わたしのハンターでしょ?」
 キミのなんだ。
 とは思いましたが(笑)

 こうしてハンターに救われたマンティッド。
 ようやく開放され、青空の下でロレーンと再会を果たした彼。
 おそらくこの人も爺さんと同じく既に死んでいて、復讐の念によって現世にとどまっていたんでしょうね。(顔色グリーンだもんなぁ)
 精霊オラクルが「天国への長い道」をショートカットして、ロレーンにすぐに会えるように手配したのでしょう。
 ロレーン人形は、彼の孤独と絶望の象徴だったんですね。
 精霊の力を注入されて、ラスボスとしてハンター達の前に立ちふさがるのかと思ってました(笑)

 それにしても、マンティッドと和解するとは思ってませんでした。
 敵との歩みよりを描くには、インセクターとの和解成立だけで充分だと思ってましたので。
 主人公が非戦主義でも、ヒーローものなら最後は激しいバトル、という固定観念を崩されました。
 でもこの作品のバトルシーン、必殺技に頼らない一瞬の攻防が凄かったことがあってちょっと期待してたんですけどね。
 『オラクルの勇者たち』ラスト付近の、ハンター + マグマ vs アクーネとか。文章だと全部は伝わらないと思うのですが。


マグマアクーネに飛び掛かる
 
アクーネ、手持ちの槍を地面に刺し、それを支えにジャンプしてマグマをかわす
 
アクーネ、空中で(ジャンプ後着地することなく)槍を軸に体を回転、マグマを蹴りで吹っ飛ばす
 
ハンター、着地したアクーネに突撃
 
アクーネ、流れるような動作で地面の槍を抜き、柄部分でハンターの体を持ち上げ投げ飛ばす


 これがわずか3秒程度で繰り広げられたんですよ。あんまり驚いたので携帯に連写画像が今も残してあります。
 それでも戦いを否定したあの着地に十二分に満足したので問題なしですが。


 ではキャラ別の感想にいきますかね。まずは脇役男性陣。

 マグマ。勇者ブレイド大好きな頼れる兄貴分。イグナスより恋愛能力が上っぽい?
 家族をインセクターに殺されたこともあってアクーネやグラスホップへの態度がきつめでした。
 ですが憎悪や復讐心に囚われることなく、最後には彼らを受け入れてくれたナイスガイです。拍手。

 イグナス。大人コンビの片割れ。インセクターとの和解には当初は懐疑的でしたが、彼も立場ある人間ですしね。
 ですが一番の見せ場は「グッバイ・・・マイ、ラブ・・・」の使えない状態。抱きとめる姿勢のまま伸ばされ続ける両腕に笑いました。

 ルメン王子。10歳にしても12歳にしても、人間が出来すぎ。
 政治面でも恋愛面でも有能すぎる男性陣最年少。王子キャラは多々有れど、ここまで将来有望なのはかなり貴重かと。
 成長したらモテモテでしょうが、うまく受け流して自分のペース保ってほしいところ。

 インセクター四天虫。バグースを筆頭に、昆虫帝国を導いてください。
 それにしても、バグースは何の虫なのか。足以外はマンティッド以上に人間っぽいです。
 この人、罪悪感からアクーネを気にかけて、ビーレインをやきもきさせそうだ。アクーネの仮面を外す時には「近い、そして長い!」と思いました。
 ビーレインの恋は実るのでしょうか。がんばれ、蜂のおばちゃん! まずバグースと一緒に仮面取ろう!(アレ顔の一部じゃないですよね)
 スタッグスはビーレインの気持ちを察していたりと武人ながら気配りのできる人ですし、バグースの補佐をお願いしたいところ。
 グラスホップは家族ごとアラクナ城に引っ越すといいと思います。人間とインセクターの共存の助けになってくれますよ。姫を守って戦った時の意外な強さには驚きました。

 勇者ブレイド。
 ようやく洗脳が解けたアクーネの心臓を止めかけた色男。お兄さんだろ」はおいしすぎる。
 最後の最後ハンターに語りかけたときは、祖父とのこと教えてくれるのかと思ったのですが。
「お前、コロナちゃんとアクーネちゃんのどっちを選ぶんじゃー?」
 って波紋を残して去るんですか、勇者。
 まあ、憎しみで世界が回っていた過去から、好意で世界が動く時代に変わったってことにしておきましょう(笑)

 そして、ヒロインズ。
 スパークル姫は、なんといっても変身シーンの可愛さがダントツだと思います。変身後の姿ももっと見たかった。稀少すぎます。
 パートナーのホターラは最後までしゃべれませんでしたねー。

 アクーネ。儚い雰囲気ながら芯は強い感じが良いです。洗脳状態のせいで本当の彼女の出番は削られているのですが、それであれほどの印象を残すとは。
 ラストの「聞かせてくださーい」の屈託ない様子に、彼女を覆う陰が消えたことがわかってよかったです。それにしても、意外と乗り気だ(笑)
 コロナとは姉妹だって知ってたのかなー。『よみがえる太陽』の前半12話分見られなかったのが痛い。

 コロナ。
「泣くなよー。こういう時、なんて言うかわかってるだろ?」
「うんっ」
 最終話では、ハンターとのこのやり取りが最高。
 最初は「ハンターとはそんなんじゃない」と彼への好意を認めなかったのに、しっかり自覚できるようになってあのラストっていうのが感慨深いわー。
 いつも元気な彼女だけに、不安そうにしてると守ってあげたくなりますね。私、精霊の巫女なんだって。どうしよう・・・?」の時に見せた儚さに落ちました。
 その後、不安を察してくれないハンターとケンカになって気持ちが紛れちゃうところも良いー(ここについてはハンターのところでも触れます)。
 「ばかばかばか、ハンターなんてインセクターにやられちゃえ!」とか、単なるツンデレだとお約束ーって感じで流しちゃうのにコロナだとすげーかわいいという。
 『よみがえる太陽』エンディングの歌詞のイメージカット、胸元にパズルピースの形の痣のあるコロナは、本作品で誰よりもセクシーだと思います(笑)

 主人公のパートナー、シャドウ。
 パワーアップによって飛行メカっぽくなったり、手が出てきて人型ロボっぽくなったり。
 こんなかっこいいクモは今後もおそらくいないですよ。二足歩行はじめた時点でクモじゃない気もしますが。

 最後に主人公ハンター。
 熱血というにはどこかのん気な性格は、意図的なものだったと最終回まで見てようやくわかりました。
 鬼気迫る迫力とは無縁の、笑って戦うヒーロー。それが彼。
 そしてエピローグにおいて、じいさんのお膳立てでヒロイン二人を獲得。
 でも一番は、冒険。思わせぶりな態度は取らず、あっけらかんと言い切っちゃう辺りは好印象かな。
 でも「どっちを選ぶ?」って言葉に「へ?」とかならずに後ろの二人をちらっと見るあたり、成長すれば鈍さは薄れていきそうだ。
 私としては、子どもっぽさを失わないでほしい気もしますけどね。
 最終話(ちょうど今挙げた場面の直前)での、

「じいさん、達者でなー」
「じゃから、もう死んどるんじゃって」
「でもまあ、達者でなー」
「そうじゃハンター」
「なにー?」

 この能天気なやり取りとかすごく好きです。
 自分の生まれを知ったコロナが深夜に起きてて「寝なくていいのかよー。疲れてるだろー」って気遣いゼロで普通に話し掛けたり。
 更に翌日「巫女がイヤなのかよ? アクーネと姉妹なのがイヤなのか?」って聞いて「ちょっと黙っててよ!」ってコロナを怒らせて。
 自分も「いつまでもウジウジしてんなよー、ふんっ」っていつもどおりにケンカしちゃう。
 ハンターの気遣いはおどおどしてないっていうか、腫れ物に触るようにしてこないあたりがいいなぁと思います。

 逆境での打たれ強さをほこっていた彼でしたが、ラストの順境で道を誤りかけてましたね。
 「あのままだったら、駄目になってた」って言ってたけど、そのことにいつ気付いたんでしょう。
 「マンティッドを倒して世界を救うんだ、(中略)困っている人を助けるんだ」って言ってマンティッドに刃を突きつけた、その後に有った間ですかね。
 うまくいかなくっても諦めず、意志を曲げず。調子よくいっている時でも、己を見失わない。うーむ、自分の意志を貫くって大変だなあ。


 そんな感じで、つい長く書いてしまいました。
 ほんとにこの最終回を見られて良かったです。今更ですが制作の方々、良い作品をありがとうございました。
 もっとあちこちで放送してほしいと思います。たくさんの人に見てほしいですし。
 最後に、この長い感想を読んでくれた方、ありがとうございました。後日SS書くつもりです。需要ないでしょうが、もう止まらないです。
 それではきょうはこれで。それでは。


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