2014年02月09日
ファイ・ブレイン 〜神のパズル _第3シリーズ 18話『私、パズルが解けなくてもいい』感想 / テレビアニメシリーズ
ネタバレありますので、以下は続きから。
カイトとフリーセルに【ファイ・ブレイン】となれば辛い過去を無かったことにできる、親の死を回避できる、と説くオルペウス。
それを目にしたカイトとフリーセルは、そしてノノハは――
【ファイ・ブレイン】候補の二人と一緒にいたのでまとめて異世界に連れ込まれたノノハのまさかの活躍に、オルペウスの見た未来が叩き壊されてしまったという。
これがヒロインの力(物理)・・・・・(笑)。
男子二人をぶちのめすノノハのパワフルさと、カイトの決意で爽快に終わりましたが、考えるに今回は実に重い回だったなーと。
辛い過去の映像を見せられたのもそうですが、神を超える【ファイ・ブレイン】とは異なる選択肢である【人間】を誤魔化すことなく正面から描いていたように感じました。
1期2期での【ファイ・ブレイン】という存在には、それになるメリットがありませんでした。
超人的な頭脳を得られ、未来を見ることができるようになる。それはすごいメリットなのですが、その一方で、なってしまえば世界は滅亡するという。
デメリットがいくらなんでも大きすぎて、メリットと釣り合いません(笑)。
でも、3期になって『ファイ・ブレインとなれば過去が変えられる』という新情報が出てきました。
これは、今までにない特大なメリットです。
世界が崩壊するのは変わらないとしても、この能力の存在は大きい。
ラヴーシュカを喪い、今の世界に未練の無いエニグマは、崩壊の未来を恐れません(1期の世界に絶望したルークもそうでした)。
【未来】より、【過去】の方が比重が大きければ、心を動かされかねない状況になりました。
カイトとフリーセルも、この新たな局面に向き合って答えを出す必要が出てきました。
ただ、「人生まで奪うつもりはない」「身体は1年貸してくれるだけで良い」というオルペウスの発言は、この滅亡の未来のことをを考えてないように思えて、少し気になるところではあります。
身体が帰って来て、残りの人生を好きに生きられても、世界が崩壊してたらうれしくないわけで・・・
もしかしたら彼は、世界の滅亡も改変できると考えているのかもしれません。
それはともかく、今回のカイトとフリーセルは「【ファイ・ブレイン】にはならない」と結論を出しました。
これは、聖人君子には遠く、非常に人間らしい感情によって導き出された答えだと私には思えました。
この答えは正しいのですが、一方で傷つく人も出てきます(ただ、別の答えを選べば別の人が傷つく、必ず誰かが傷つく話)。
でも、彼らには相応しい答えで、だからこそ間違っていないと感じられました。
もってまわった言い方はやめてはっきり言いますと。
カイトとフリーセルは、『親を生かして(今の)自分は消える世界』と『親は死ぬけど、自分が存続できる世界』の選択で、後者を取ったと思うのです。
これもかなりきつい言い方ですが、更に酷な言い方をしますと。
『自分が愛されない世界』と『自分が愛されている世界』で後者を取った、ということではないかと。
なんでそうなるかって言いますと。
ノノハが幸せそうな学園生活を送る自分たちを見て、「あんなの、本当の私たちじゃない」って言うじゃないですか。
あの4人は、今のカイトたちとは全く別の人生を歩み、全く別の記憶を持って生きています。身体は同じでも、もはや別人と言えるでしょう。
親たちを死から救っても、その元で暮せるのは、親に愛されるのは、今のカイトやフリーセルではない。
そしてノノハは、「いろんなことがあったから、カイトともフリーセル(くん)とも会えた」とも言います。
今のカイトやフリーセルを愛してくれるのは、生き返らせた親では無く、今のノノハなんですよね。
ノノハの言葉で、カイトたちは自己犠牲で親を生かすのではなく、今の世界を選んだ。
こう書くと、カイトたちを身勝手だと非難しているように受け取られるかもしれませんが、そんなことはないです。
自己犠牲なんて簡単にできるものではない。利他に徹する事など、そうそうできない。
【人間】とはそういうものだと思います。
これは私の考えですが、そういう人間は、人間も神も超えることなく、今のまま人として在るべきではないかと。
それに、「過去を変える」という選択肢だってやはり利己的なのです。
変えられない今の人生を望む人だって世界にはいるのに、カイトたちが自分の都合で勝手に変えてしまう事が許されるのか。
たとえば、幸せなIF世界で、生徒会長として登場したルーク。
腕輪に呑まれてカイトに執着し、解放された後に贖罪の旅に出、後にPOGの管理官に復帰。そんな人生を、あの世界のルークは送ってはいないでしょう。
苦難を乗り越え、カイトにも「強くなった」と言われるまでになったルークの人生を、本人に何の断りも無く「無かったこと」にする。それはやはり傲慢だと思います。
まあ、その傲慢を平然と貫けるなら、そのメンタリティは既に『神』の領域で、『神』に相応しい逸材だと証明することになるのかもしれませんが(笑)。
あとですね。
オルペウスが見せたあの世界はあくまで「カイトやフリーセルが望む世界」という気もします。
カイトの親は、記憶にない実の両親ではなく、大門夫妻。フリーセルの家も、父親の姿は見えない(仕事に行っているだけという可能性もありますが・・・)。
親がただ助かるだけでなく、カイトとフリーセルによって命を救われているのもちょっと不自然なような・・・。
あの世界が「もっと愛されたかった」という彼らの願望の具現化だとすれば、充分に愛されている今の世界を選ぶのは、単により望ましい世界を選んだだけ(利他的になれなかったわけではない)と見ることもできるかもしれません。
・・・・この見方が正しいとすると、ここまで私が書いてきた文章の大半が無意味にになる気もしますが(笑)。
それとはまた別の話として。
カイトたちが今後まっとうに【人間】として道を外れることなく生涯を送るためには、この選択は必要なものだったとも思います(オルペウスにはそんなつもりはないのですが)。
カイトとフリーセルは、【ファイ・ブレイン】になることなく、ただの人間で有り続けることを選びました。
言うまでも無いことですが、【人間】の力には限りがあり、そのために救いたくても救えない人が出てきます。
大門夫妻や、ソリティアさん、それに、ジンが彼なりに力を尽くしても救えなかったレイツェルのような(ジンが【ファイ・ブレイン】となれば、レイツェルを救えたでしょう。彼女の両親の死を無くすこともできた)。
カイトとフリーセル(ノノハ)は、人の力ではどうにもできない悲劇が有ることを知ったうえで、その悲劇の存在を許容したと見ることも出来ます。
乱暴な言い方をしてしまうと、「避けられない悲劇で不幸になる人も出てくるけど、それは仕方ない」という結論を出した(そう考えると、レイツェルと敵対するのも、やむをえないように思えます)。
でも、自分たちの不幸に向き合ったうえでこの結論を導き出すことは、彼らの今後の人生を考えれば必要な事だったのではないかと。
たとえオルペウスを滅ぼせたとしても、これから彼らが生きていくうえで、悲劇に行き当たる可能性はどうしても残ります。
未来は、オルペウスにとってさえ不確定なのですから、可能性をゼロにはできません。
そうなった時にカイトかフリーセルが「そうだ、【ファイ・ブレイン】の力があれば、この不幸を無かったことにできる!」と思ったら、第二のオルペウスが生まれてしまう。
だから彼らは、不幸になってしまう人の存在を受け入れられないといけないのです。自分自身もその例外ではない。
長い上に、色んな可能性を考えたせいですっきりしない文章になってしまいました。
繰り返しになりますが、色々カイトたちにキツイことも書きましたが、私は彼らの選択は間違ってないと思っています。
どの選択をしても、誰かを傷つけるわけですが、人間ってそういうものです。
エゴは捨てられず、愛されることを求め、皆を救うには力が足りない。
超人になれるほどの天才だとされる、カイトとフリーセルですが、どうしようもなく人間なんだなぁと思えて親しみがわきました。
まあカイトがまた「パズルの声が聞こえる」なんて言い出したら、その時はまた「天才の言うことはさっぱり分からない・・・・」とは思うのでしょうが(笑)。
にほんブログ村
□第3シリーズ 25話『生きているのがムチャクチャ楽しい』感想(前編)
□第3シリーズ 24話『欠けていても』感想
□第3シリーズ 23話『ふたりで!』感想
□第3シリーズ 22話『だから、君が迷うな』感想
□第3シリーズ 21話『カイト、君の負けだ』感想
□第3シリーズ 20話『星100個のジンに乾杯』感想
□第3シリーズ 19話『見ててくれたから』感想
□第3シリーズ 18話『私、パズルが解けなくてもいい』
□第3シリーズ 17話『ファイ・ブレインとなれ』感想へ
□第3シリーズ 16話『旅が終わる』感想へ
□第3シリーズ 15話『おなかいっぱいの世界をつくりたいの』感想へ
□第3シリーズ 14話『あのころの僕たちなら』感想へ
□第3シリーズ 13話『こいつは底が浅すぎる』感想へ
□第3シリーズ 12話『などと言うと思ったか?』感想へ
□第3シリーズ 11話『今、誰かを思ってた』感想へ
□第3シリーズ 10話『本当の夢は何だ?』感想へ
□第3シリーズ 9話『行きましょう、あの場所へ』感想へ
□第3シリーズ 8話『永遠にさようなら』感想へ
□第3シリーズ 7話『あなたもお花いかが?』感想へ
□第3シリーズ 6話『レイレイはネコ友』感想へ
□第3シリーズ 5話『そんな気がする』感想へ
□第3シリーズ 4話『おいしいものを食べればだいたいのことは解決する』感想へ
□第3シリーズ 3話『それでも俺は信じる』感想へ
□第3シリーズ 2話『君は何も知らない』感想へ
□第3シリーズ 1話『レイツェル…』感想へ
■番外『もっともっと神のパズル スペシャル』感想へ
○第2シリーズ 25話『無限のパズルを解き放て!』感想へ
○第2シリーズ 24話『閉じた世界』感想へ
○第2シリーズ 23話『神の誤算』感想へ
○第2シリーズ 22話『盤上の支配者』感想へ
○第2シリーズ 21話『悲しき道化師』感想へ
○第2シリーズ 20話『愚者のパズル再び』感想へ
○第2シリーズ 19話『覚醒』感想へ
○第2シリーズ 18話『その男、ヘルベルトにつき』感想へ
○第2シリーズ 17話『ピノクルの覚悟』感想へ
○第2シリーズ 16話『憎しみの欠片(ピース)』感想へ
○第2シリーズ 15話『つぐない』感想へ
○第2シリーズ 14話『帰ってきた悪魔』感想へ
○第2シリーズ 13話『禁断の果実』感想へ
○第2シリーズ 12話『ミノタウロスの誘惑』感想へ
○第2シリーズ 11話『ノノハだって解きたい!』感想へ
○第2シリーズ 10話『パズルタイムが始まらない!』感想へ
○第2シリーズ 9話『笑顔の真実』感想へ
○第2シリーズ 8話『ほわわんをあげたい』感想へ
○第2シリーズ 7話『約束』感想へ
○第2シリーズ 6話『決闘はパズルの調べ』感想へ
○第2シリーズ 5話『迷えるガリレオ』感想へ
○第2シリーズ 4話『騎士たちの夜』感想へ
○第2シリーズ 3話『ぺろりんぽろりんのワナ』感想へ
○第2シリーズ 2話『心の闇』感想へ
○第2シリーズ 1話『オルペウス・オーダー』感想へ
●第1シリーズ 25話『パズルタイムの始まりだ!』感想へ
●第1シリーズ 24話『永遠の存在』感想へ
●第1シリーズ 23話『残された選択肢』感想へ
●第1シリーズ 22話『志を継ぐもの』感想へ
●第1シリーズ 21話『光る涙』感想へ
●第1シリーズ 20話『加速する挑戦者』感想へ
●第1シリーズ 19話『裏切りの証明』感想へ
●第1シリーズ 18話『光への反逆』感想へ
●第1シリーズ 17話『真実』感想へ
●第1シリーズ 16話『断罪の迷宮(ラビリンス)』感想へ
●第1シリーズ 15話『蒼(あお)い太陽、緋(あか)い月』感想へ
●第1シリーズ 14話『友情の資格』感想へ
●第1シリーズ 13話『決別の塔』感想へ
●第1シリーズ 12話『再会のパズルタイム』感想へ
●第1シリーズ 11話『女王様の逆襲』感想へ
●第1シリーズ 10話『女王の国へようこそ』感想へ
●第1シリーズ 9話『落ちたリンゴと道の続き』感想へ
●第1シリーズ 8話『カニ!温泉!パズル王!』感想へ
●第1シリーズ 7話『ノノハの称号』感想へ
●第1シリーズ 6話『光への復活』感想へ
●第1シリーズ 5話『悪夢からの招待状』感想へ
●第1シリーズ 4話『密室の少女』感想へ
●第1シリーズ 3話『天才少年の憂鬱』感想へ
●第1シリーズ 2話『賢者の報酬』感想へ
●第1シリーズ 1話『迷宮にひそむ契約』感想へ
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.1 【初回限定生産版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.1 【通常版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.1 [DVD]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.2 【初回限定生産版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.2 【通常版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.2 [DVD]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.3 【初回限定生産版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.3 【通常版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.3 [DVD]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.4 【初回限定生産版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.4 【通常版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.4 [DVD]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.5 【初回限定生産版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.5 【通常版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.5 [DVD]
ファイ・ブレイン ~神のパズル Vol.6 【初回限定生産版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.6 【通常版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.6 [DVD]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.7 【初回限定生産版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.7 【通常版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.7 [DVD]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル オルペウス・オーダー編 ブルーレイBOX I [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル オルペウス・オーダー編 DVD BOX I
ファイ・ブレイン 〜神のパズル オルペウス・オーダー編 ブルーレイBOX II [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル オルペウス・オーダー編 DVD-BOX II
ファイ・ブレイン 公式スターターBOOK
ファイ・ブレイン 神のパズル ビジュアルファンブック
ファイ・ブレイン〜神のパズル (1) (カドカワコミックスAエース)
ファイ・ブレイン〜神のパズル (2) (カドカワコミックス・エース)
それを目にしたカイトとフリーセルは、そしてノノハは――
【ファイ・ブレイン】候補の二人と一緒にいたのでまとめて異世界に連れ込まれたノノハのまさかの活躍に、オルペウスの見た未来が叩き壊されてしまったという。
これがヒロインの力(物理)・・・・・(笑)。
男子二人をぶちのめすノノハのパワフルさと、カイトの決意で爽快に終わりましたが、考えるに今回は実に重い回だったなーと。
辛い過去の映像を見せられたのもそうですが、神を超える【ファイ・ブレイン】とは異なる選択肢である【人間】を誤魔化すことなく正面から描いていたように感じました。
1期2期での【ファイ・ブレイン】という存在には、それになるメリットがありませんでした。
超人的な頭脳を得られ、未来を見ることができるようになる。それはすごいメリットなのですが、その一方で、なってしまえば世界は滅亡するという。
デメリットがいくらなんでも大きすぎて、メリットと釣り合いません(笑)。
でも、3期になって『ファイ・ブレインとなれば過去が変えられる』という新情報が出てきました。
これは、今までにない特大なメリットです。
世界が崩壊するのは変わらないとしても、この能力の存在は大きい。
ラヴーシュカを喪い、今の世界に未練の無いエニグマは、崩壊の未来を恐れません(1期の世界に絶望したルークもそうでした)。
【未来】より、【過去】の方が比重が大きければ、心を動かされかねない状況になりました。
カイトとフリーセルも、この新たな局面に向き合って答えを出す必要が出てきました。
ただ、「人生まで奪うつもりはない」「身体は1年貸してくれるだけで良い」というオルペウスの発言は、この滅亡の未来のことをを考えてないように思えて、少し気になるところではあります。
身体が帰って来て、残りの人生を好きに生きられても、世界が崩壊してたらうれしくないわけで・・・
もしかしたら彼は、世界の滅亡も改変できると考えているのかもしれません。
それはともかく、今回のカイトとフリーセルは「【ファイ・ブレイン】にはならない」と結論を出しました。
これは、聖人君子には遠く、非常に人間らしい感情によって導き出された答えだと私には思えました。
この答えは正しいのですが、一方で傷つく人も出てきます(ただ、別の答えを選べば別の人が傷つく、必ず誰かが傷つく話)。
でも、彼らには相応しい答えで、だからこそ間違っていないと感じられました。
もってまわった言い方はやめてはっきり言いますと。
カイトとフリーセルは、『親を生かして(今の)自分は消える世界』と『親は死ぬけど、自分が存続できる世界』の選択で、後者を取ったと思うのです。
これもかなりきつい言い方ですが、更に酷な言い方をしますと。
『自分が愛されない世界』と『自分が愛されている世界』で後者を取った、ということではないかと。
なんでそうなるかって言いますと。
ノノハが幸せそうな学園生活を送る自分たちを見て、「あんなの、本当の私たちじゃない」って言うじゃないですか。
あの4人は、今のカイトたちとは全く別の人生を歩み、全く別の記憶を持って生きています。身体は同じでも、もはや別人と言えるでしょう。
親たちを死から救っても、その元で暮せるのは、親に愛されるのは、今のカイトやフリーセルではない。
そしてノノハは、「いろんなことがあったから、カイトともフリーセル(くん)とも会えた」とも言います。
今のカイトやフリーセルを愛してくれるのは、生き返らせた親では無く、今のノノハなんですよね。
ノノハの言葉で、カイトたちは自己犠牲で親を生かすのではなく、今の世界を選んだ。
こう書くと、カイトたちを身勝手だと非難しているように受け取られるかもしれませんが、そんなことはないです。
自己犠牲なんて簡単にできるものではない。利他に徹する事など、そうそうできない。
【人間】とはそういうものだと思います。
これは私の考えですが、そういう人間は、人間も神も超えることなく、今のまま人として在るべきではないかと。
それに、「過去を変える」という選択肢だってやはり利己的なのです。
変えられない今の人生を望む人だって世界にはいるのに、カイトたちが自分の都合で勝手に変えてしまう事が許されるのか。
たとえば、幸せなIF世界で、生徒会長として登場したルーク。
腕輪に呑まれてカイトに執着し、解放された後に贖罪の旅に出、後にPOGの管理官に復帰。そんな人生を、あの世界のルークは送ってはいないでしょう。
苦難を乗り越え、カイトにも「強くなった」と言われるまでになったルークの人生を、本人に何の断りも無く「無かったこと」にする。それはやはり傲慢だと思います。
まあ、その傲慢を平然と貫けるなら、そのメンタリティは既に『神』の領域で、『神』に相応しい逸材だと証明することになるのかもしれませんが(笑)。
あとですね。
オルペウスが見せたあの世界はあくまで「カイトやフリーセルが望む世界」という気もします。
カイトの親は、記憶にない実の両親ではなく、大門夫妻。フリーセルの家も、父親の姿は見えない(仕事に行っているだけという可能性もありますが・・・)。
親がただ助かるだけでなく、カイトとフリーセルによって命を救われているのもちょっと不自然なような・・・。
あの世界が「もっと愛されたかった」という彼らの願望の具現化だとすれば、充分に愛されている今の世界を選ぶのは、単により望ましい世界を選んだだけ(利他的になれなかったわけではない)と見ることもできるかもしれません。
・・・・この見方が正しいとすると、ここまで私が書いてきた文章の大半が無意味にになる気もしますが(笑)。
それとはまた別の話として。
カイトたちが今後まっとうに【人間】として道を外れることなく生涯を送るためには、この選択は必要なものだったとも思います(オルペウスにはそんなつもりはないのですが)。
カイトとフリーセルは、【ファイ・ブレイン】になることなく、ただの人間で有り続けることを選びました。
言うまでも無いことですが、【人間】の力には限りがあり、そのために救いたくても救えない人が出てきます。
大門夫妻や、ソリティアさん、それに、ジンが彼なりに力を尽くしても救えなかったレイツェルのような(ジンが【ファイ・ブレイン】となれば、レイツェルを救えたでしょう。彼女の両親の死を無くすこともできた)。
カイトとフリーセル(ノノハ)は、人の力ではどうにもできない悲劇が有ることを知ったうえで、その悲劇の存在を許容したと見ることも出来ます。
乱暴な言い方をしてしまうと、「避けられない悲劇で不幸になる人も出てくるけど、それは仕方ない」という結論を出した(そう考えると、レイツェルと敵対するのも、やむをえないように思えます)。
でも、自分たちの不幸に向き合ったうえでこの結論を導き出すことは、彼らの今後の人生を考えれば必要な事だったのではないかと。
たとえオルペウスを滅ぼせたとしても、これから彼らが生きていくうえで、悲劇に行き当たる可能性はどうしても残ります。
未来は、オルペウスにとってさえ不確定なのですから、可能性をゼロにはできません。
そうなった時にカイトかフリーセルが「そうだ、【ファイ・ブレイン】の力があれば、この不幸を無かったことにできる!」と思ったら、第二のオルペウスが生まれてしまう。
だから彼らは、不幸になってしまう人の存在を受け入れられないといけないのです。自分自身もその例外ではない。
長い上に、色んな可能性を考えたせいですっきりしない文章になってしまいました。
繰り返しになりますが、色々カイトたちにキツイことも書きましたが、私は彼らの選択は間違ってないと思っています。
どの選択をしても、誰かを傷つけるわけですが、人間ってそういうものです。
エゴは捨てられず、愛されることを求め、皆を救うには力が足りない。
超人になれるほどの天才だとされる、カイトとフリーセルですが、どうしようもなく人間なんだなぁと思えて親しみがわきました。
まあカイトがまた「パズルの声が聞こえる」なんて言い出したら、その時はまた「天才の言うことはさっぱり分からない・・・・」とは思うのでしょうが(笑)。
にほんブログ村
□第3シリーズ 25話『生きているのがムチャクチャ楽しい』感想(前編)
□第3シリーズ 24話『欠けていても』感想
□第3シリーズ 23話『ふたりで!』感想
□第3シリーズ 22話『だから、君が迷うな』感想
□第3シリーズ 21話『カイト、君の負けだ』感想
□第3シリーズ 20話『星100個のジンに乾杯』感想
□第3シリーズ 19話『見ててくれたから』感想
□第3シリーズ 18話『私、パズルが解けなくてもいい』
□第3シリーズ 17話『ファイ・ブレインとなれ』感想へ
□第3シリーズ 16話『旅が終わる』感想へ
□第3シリーズ 15話『おなかいっぱいの世界をつくりたいの』感想へ
□第3シリーズ 14話『あのころの僕たちなら』感想へ
□第3シリーズ 13話『こいつは底が浅すぎる』感想へ
□第3シリーズ 12話『などと言うと思ったか?』感想へ
□第3シリーズ 11話『今、誰かを思ってた』感想へ
□第3シリーズ 10話『本当の夢は何だ?』感想へ
□第3シリーズ 9話『行きましょう、あの場所へ』感想へ
□第3シリーズ 8話『永遠にさようなら』感想へ
□第3シリーズ 7話『あなたもお花いかが?』感想へ
□第3シリーズ 6話『レイレイはネコ友』感想へ
□第3シリーズ 5話『そんな気がする』感想へ
□第3シリーズ 4話『おいしいものを食べればだいたいのことは解決する』感想へ
□第3シリーズ 3話『それでも俺は信じる』感想へ
□第3シリーズ 2話『君は何も知らない』感想へ
□第3シリーズ 1話『レイツェル…』感想へ
■番外『もっともっと神のパズル スペシャル』感想へ
○第2シリーズ 25話『無限のパズルを解き放て!』感想へ
○第2シリーズ 24話『閉じた世界』感想へ
○第2シリーズ 23話『神の誤算』感想へ
○第2シリーズ 22話『盤上の支配者』感想へ
○第2シリーズ 21話『悲しき道化師』感想へ
○第2シリーズ 20話『愚者のパズル再び』感想へ
○第2シリーズ 19話『覚醒』感想へ
○第2シリーズ 18話『その男、ヘルベルトにつき』感想へ
○第2シリーズ 17話『ピノクルの覚悟』感想へ
○第2シリーズ 16話『憎しみの欠片(ピース)』感想へ
○第2シリーズ 15話『つぐない』感想へ
○第2シリーズ 14話『帰ってきた悪魔』感想へ
○第2シリーズ 13話『禁断の果実』感想へ
○第2シリーズ 12話『ミノタウロスの誘惑』感想へ
○第2シリーズ 11話『ノノハだって解きたい!』感想へ
○第2シリーズ 10話『パズルタイムが始まらない!』感想へ
○第2シリーズ 9話『笑顔の真実』感想へ
○第2シリーズ 8話『ほわわんをあげたい』感想へ
○第2シリーズ 7話『約束』感想へ
○第2シリーズ 6話『決闘はパズルの調べ』感想へ
○第2シリーズ 5話『迷えるガリレオ』感想へ
○第2シリーズ 4話『騎士たちの夜』感想へ
○第2シリーズ 3話『ぺろりんぽろりんのワナ』感想へ
○第2シリーズ 2話『心の闇』感想へ
○第2シリーズ 1話『オルペウス・オーダー』感想へ
●第1シリーズ 25話『パズルタイムの始まりだ!』感想へ
●第1シリーズ 24話『永遠の存在』感想へ
●第1シリーズ 23話『残された選択肢』感想へ
●第1シリーズ 22話『志を継ぐもの』感想へ
●第1シリーズ 21話『光る涙』感想へ
●第1シリーズ 20話『加速する挑戦者』感想へ
●第1シリーズ 19話『裏切りの証明』感想へ
●第1シリーズ 18話『光への反逆』感想へ
●第1シリーズ 17話『真実』感想へ
●第1シリーズ 16話『断罪の迷宮(ラビリンス)』感想へ
●第1シリーズ 15話『蒼(あお)い太陽、緋(あか)い月』感想へ
●第1シリーズ 14話『友情の資格』感想へ
●第1シリーズ 13話『決別の塔』感想へ
●第1シリーズ 12話『再会のパズルタイム』感想へ
●第1シリーズ 11話『女王様の逆襲』感想へ
●第1シリーズ 10話『女王の国へようこそ』感想へ
●第1シリーズ 9話『落ちたリンゴと道の続き』感想へ
●第1シリーズ 8話『カニ!温泉!パズル王!』感想へ
●第1シリーズ 7話『ノノハの称号』感想へ
●第1シリーズ 6話『光への復活』感想へ
●第1シリーズ 5話『悪夢からの招待状』感想へ
●第1シリーズ 4話『密室の少女』感想へ
●第1シリーズ 3話『天才少年の憂鬱』感想へ
●第1シリーズ 2話『賢者の報酬』感想へ
●第1シリーズ 1話『迷宮にひそむ契約』感想へ
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.1 【初回限定生産版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.1 【通常版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.1 [DVD]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.2 【初回限定生産版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.2 【通常版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.2 [DVD]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.3 【初回限定生産版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.3 【通常版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.3 [DVD]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.4 【初回限定生産版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.4 【通常版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.4 [DVD]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.5 【初回限定生産版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.5 【通常版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.5 [DVD]
ファイ・ブレイン ~神のパズル Vol.6 【初回限定生産版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.6 【通常版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.6 [DVD]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.7 【初回限定生産版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.7 【通常版】 [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル Vol.7 [DVD]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル オルペウス・オーダー編 ブルーレイBOX I [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル オルペウス・オーダー編 DVD BOX I
ファイ・ブレイン 〜神のパズル オルペウス・オーダー編 ブルーレイBOX II [Blu-ray]
ファイ・ブレイン 〜神のパズル オルペウス・オーダー編 DVD-BOX II
ファイ・ブレイン 公式スターターBOOK
ファイ・ブレイン 神のパズル ビジュアルファンブック
ファイ・ブレイン〜神のパズル (1) (カドカワコミックスAエース)
ファイ・ブレイン〜神のパズル (2) (カドカワコミックス・エース)