はなまる幼稚園_第1話『はなまるな入園式』『はなまるなおかあさん』感想 / テレビアニメ
ネタバレありますので、以下は続きから。
タイトルが『はなまる幼稚園』なのに、園の外の様子もしっかり描かれていたのが印象的でした。
10代を通り越して大分経つ自分からすると、学園ものとか『学校』(この作品の場合は幼稚園ですが)がメインだとやや閉塞感を感じてしまうんですよ。
学校って言うのは、一般社会とは違う閉ざされた空間で。もう戻れない場所で(色々あって、今の自分は学生なのですが)。
登場人物と違ってそこの生徒ではない自分は、箱庭を外から眺めるばかり。とてもじゃないけど中には入れない。
そこで感じる疎外感とか隔絶された感じ。この作品だとそういった閉塞感がなかったんです。
それは、園外や縦の人間関係を描いてくれているおかげで、作品世界に広がりを感じるからなのだと思います。
縦の人間関係っていうのは、年齢差のある関係。
つっちー(土田先生)の周囲に、そういった関係がちゃんと構築されていると思いました。
新人のつっちー。先輩の山本先生。ベテラン風の先生二人がいて、一番上に年配の園長先生。
社会に出て気付いたのは、同い年ばかりが集められていた場所がいかに特殊かということ。
会社とかでは、同年代だけの空間というのはほとんど無いと思います(大企業に就職した人は、新人研修で同世代の集団をまた経験するかもしれないですけど)。
一般社会の人間関係は、年齢がバラバラなのが当たり前。
学校でも先輩後輩というのはありますが、それだってせいぜい2歳差。先生は年齢差より前に立場の違いが大きいし。年の離れた兄弟がいたとしてもそれは家族。
職場の同僚にはそういった制限は無いから、当然年代が幅広くなるわけです。
「縦社会かー。上下関係とか嫌いー」と思う方もおられるでしょうが、縦の人間関係=悪しき慣習ではないのではないかと。
人事の責任者の園長先生は初めての男性教諭を広い心で受け入れて。ベテランの先生達はつっちー先生をちゃんと「鍛え」(=仕事を教えて)くれる。
山本先生も、遅刻を優しく許してくれたりお布団を持ってきてくれたりとフォローをしてくれて。
上の人たちは、新入りを優しく見守って育てる。そういう、人を育てる体制ができているのは、悪いことではないと思うのですよ。
・・・と書くと、この幼稚園はつっちー専用育成施設かよって感じですが(笑)。
でも、きっと育児って親や教師だけに押し付けるものではなく、近所の人とか街ぐるみでサポートするもの。
つっちー先生への手厚いフォロー体制は、そういうことを示唆しているのではないかと思います。
無論、それでも先生(や親)の役目が大きなことには変わらない。彼らが、ちゃんと子どもを受け止めてあげないといけない。
布団が下にあるけれど、ちゃんと身体で杏を受け止めたつっちー先生の行動は、そのへんの比喩として肯定的に描かれていたのだと思います。
それから、園外の描写もちゃんとあって、それが好印象でした。
学園ものだったりすると、基本は学校内で家は添え物的な場合も多く有る気がします。
妹や幼馴染が毎朝起こしに来てくれる、っていうイベントをやるだけとか(笑)。
でもこの作品だと、先生や園児達それぞれの家の様子(ご飯を食べたり家族とお話したり)があって。それが「いいなぁ」と思いました。
世界が広い感じがして、のびのびした感じで。
幼稚園や学校は、通っている時は『世界の全て』のように錯覚してしまうことがあるのですよ。おかしな話・・・って自分もそうだったのですが。
そういった学習施設というのは、社会に出る前に、社会性とか知識とか友人とかを得る場所。それが本当。
そのはずなのに、学校に居場所がなくなってしまうと全てに拒絶されたような絶望を感じてしまう。
学校の『外』にも世界が有る。むしろ、学校なんて社会のほんの一部に過ぎない。
そのことを忘れてしまって、辛い思いをする人もいるんですよね・・・
それに対して、この作品は『外』をちゃんと感じさせてくれます。
まず、杏とつっちー先生が最初に出会ったのも、園外。
さらに言えば、つっちー先輩と桜先輩(杏ママ)の親交は幼稚園と全く無関係ですし。
園児達にも先生にもそれぞれ帰る家があって、そこでの様子が見られる。
だから、園内が全てではなくて。作品世界がそこで閉じてしまわないのだと思います。
そして、その『外』があったかい。「世間なんて冷たい」とか、そんな世知辛い話は何処吹く風という感じです。
とっても仲が良い杏の両親。感情がわかりづらい柊の弾んだ気持ちを、仕事が忙しそうなのに察してくれるお父さん。小梅ちゃんのお父さんも、ちゃんと娘の話を聞いてくれる人だし。
園児の親御さんがみんないい人ですよねー。つっちー先生の『ナンパ疑惑』への必死の弁明も『いい人っぽい』とむしろ高評価だし。
そりゃあ、子どもの言うこと100%真に受けてたら親はやってられない、っていうのは有るとしても・・・「胸の大きい女性が好き」とか言い出す新任教師に子どもを任せるのは嫌がりますよ親なら(笑)。
男性教諭を「おもしろそうだから」で迎え入れてくれる園長先生(しかも一連の騒動も「おもしろすぎたかしら」で片付けてくれるし)とか、この作品世界は失敗や間違いに寛容でいいですよねー。
桜先輩のスキャンダルな人生も袋叩きにあうこともなく、幸せな家庭を築けてますし。
というかですね、先輩の『学校なんて世界の一部』という理屈の体現ぶりは凄すぎる。もう、突き抜けているとすら。
高校生で教師と結婚して、「赤ちゃん生まれるから旦那と一緒に渡米します。学校あと半年有るけど辞めますねー」とか思い切り良すぎ(笑)。
つい「現実ではありえないよー」とか思ってしまったのですが、でもこの社会の在り方だからこそ、素敵な幼稚園ができているんでしょうね。
学校や幼稚園は社会の一部。学校の空気がおかしいとしたら、それは社会全体がおかしいということ。
弱者を顧みない社会構造で「弱いものいじめは駄目です」と教えたところで直るわけがないという。
何か、汚れた自分を反省しましたよ・・・・教師と生徒という障害を越えての結婚も、赤ちゃんの誕生も、おめでたいことじゃないですか。猛省。
ほんとすいません山本先生!「遅刻をあっさり許したけど、内心は超怒ってる腹黒キャラに違いない! それがお約束!」とか言いがかりにもほどが有りました!(本当に)
・・・・あれ、いつの間にか話が妙な方向に。
話を戻して。
杏とつっちー先生の恋愛劇(笑)も『幼稚園が世界の全て』ではないからこそ、可能性があるんですよね。
非ロリコンのつっちーへの杏の恋の成就は、数年しかいられない園内では絶対無理。
幼稚園が全てだったら失恋は確定なのですが(たとえそうなっても悲恋とまでは言い切れないですけど)、でもこの作品には『外』が有る。
だから、桜ママの言うように10年後にうまくいく可能性も無きにしも非ず、という。
つっちーは山本先生に早速ベタ惚れみたいですが・・・まあ、そこは頑張れ女の子!って感じで微笑ましく見守りたいと思います。
そんな感じの第一話感想でした。
それではー。
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